Feb 03

アメリカ暮らしも一年を超えたので、生活費の反省・再検討のために2008年分の家計簿の内容を整理してみた。

勤め先をシリコンバレーに移すのにあたって、まず考えないといけなかったことの一つは生活費がどの程度かかるかということ。全般的にはデフレが続いた日本より物価(とくに家賃)も高いだろうし、車を入手して維持するのが生活のためにほぼ必須(ちなみに日本では車は持ってなかった)なので、日本よりも生活費が高額になることは間違いない。また、衰えたりとはいえ一応いまでも終身雇用前提の日本型大企業と違って、職を失うリスクが格段に高くなるだろうから、その不安定さも考慮した上で、かつ必要な生活費を賄えるだけの収入が得られるかどうかがわからなければ決断するのは難しい。そのための基本的な材料として、あらかじめ必要な生活費を把握することは必須。

そこで、webで見つけた記事とか、日本での生活費、過去にたまにこのエリアへ長期出張に来たときにかかっていた食費などをもとに、予想される生活費を見積もっていた。以下の表は、月額の生活費について、webの情報(「参考値」)、予想した値、実際にかかった費用(1年間の総額を12で割った値)を並べたもの。単位はもちろんUSドル。

項目 参考値 予想値 実際
家賃 1200-1500 1500 1622
電気/ガス 50-80 80 36.3
通信費(電話+net) 160 200 73.6
健康保険 150 300 75
自動車保険 150 300 123.5
自動車維持費 150(ガス代) 200 126.5
食費 800 800 858.5
その他 700 357.9
医療費 154
耐久消費財など 507.3
合計 4080 3934.6

合計値の比較だけからすると、予想した値からはそれほど外れていないが、個々の項目にはかなりの誤差が出ているものもあり、今後のためにもちゃんと反省しておくことは重要だろう。以下は、個別項目に関する補足と今後に向けた検討事項。

家賃

家賃の内訳は月額家賃+家財保険+security deposit(いわゆる敷金,$650)。Security depositについては、ここでは住んでる期間を2年と仮定して24ヶ月で割った値を月額の負担とみなしている(全部没収されるという想定。運よく一部戻ってくればその分割引になる)。

家賃はもっとも削減余地の大きい出費項目。去年はよその国から移ってきたばかりということで利便性を金で買ったような部分があるが、生活が安定したいまとなっては現在住んでるアパートはちょっとoverspec気味なので、今年のどこかで引っ越す可能性大。これでうまくいくと月当たり100から数百ドル程度削減できる。

通信費

通信費は実質携帯電話(iPhone)代のみ。これはいまのところ月額$65程度の固定費だが、通話をほとんどしないのでプリペイドに変更することも考え中。それでうまくいけば月当たり数十ドル安くできるかも。自宅からのネットアクセスはgoogleの無料wifiで済ませてしまっているので安上がり(というかタダ)になっている。しかし、これはMountain Viewでしか通用しない技なので、別な場所に引っ越した場合はプラス数十ドル程度の出費を見込む必要があるだろう。

健康保険

健康保険は会社によって負担割合が全然違うだろうから、個人差が激しいと思われる。現状は保険料自体はかなり安いのだが、これは会社の補助があることに加えて、悪名高いHMO(一言でいうと安いがダメダメな保険)であるというのが原因。去年HMOにしていたのは保険料をケチったためではなく、別な事情によるやむをえない選択で、今年はHMOよりは多少ましなPPOに乗り換えるつもり。そうすると保険料はもう少し高くなる。

自動車保険

自動車保険は年度途中で乗り換えて、後半はかなり安くなった(保障額をupさせた上で保険料をほぼ2/3程度にすることに成功)。したがって今年はひと月当たり数十ドル程度安くなるはず。なお、上で挙げたwebの記事では$150/月で「最低限の保険」となっているが、保険料を安くあげるために保障内容を削ったりはしていない(むしろ一般のアメリカ人の契約内容よりも厚いのでないかと予想)。ただし、自分側の車両保険のdeductive(免責額)は少し高め(=保障レベルは低め)に設定している。自分の車に関する出費なら自分でコントロールできる(たとえば安全上問題がないような傷なら修理しない、など)し、一般に車両保険の保険料は高いので、費用対効果の点で有効だと思われるため。

乗り換え後に保険料が安くなったことには、日本でもらっておいた無事故無違反証明書(なにしろ車を持ってなかったくらいなので超「優良」driverである)をsafety driverの証明として現地で使えたことが効いているようだ。日本の証明書をCaliforniaでのsafety driverの証明として使えるかどうかは保険会社(さらにいうとagentの対応)によって違うようなので、受け付けてくれる保険会社・agentを探すというのは日本から移ってきたばかりの人の経費削減策としては重要。

自動車維持費

車の維持費の内訳は、ここではガス代とオイル交換・定期メンテナンス費用(「参考値」のweb記事ではガス代のみを指す)。これに加えて、年に一回登録更新費用が$300(2年目の例では$269)近くかかるが、初回時については購入費用の中に埋もれていて上の表には含まれていない。メンテナンスも2008年中はオイル交換程度($60くらい)だったが、今年に入ってから実施した15000マイルの点検は$140ほどかかっている。といったこともあわせて考えると、上記の内容プラス$30/月程度は見込む必要がありそう。

なお、日本だと「車の維持費」といえば駐車場代がかなりの割合を占めるのが普通かと思うが、田舎のシリコンバレーではアパートにはほぼ自動的に駐車スペースがついてくるので、駐車場のために特別に払う費用は存在しない(あえていえば家賃の一部だけど、駐車スペースなしで割引というオプションはあまり聞いたことがないので費用として算出するのは難しい)。

ところで、車の購入代金は上記の表のどこにも含まれていないが、本来なら車の購入代金自体も生活費の一部として計算すべきだろう。今回は、額が突出して大きいためにそのままだとnoiseになってしまうことと、当分車を買い換えるようなことにはならない(そんなに長くいるかも不明)だろうということで、一発限りの高額出費とみなしているが、もし車を買い換えるくらい長期で住むことになれば、購入代金を利用予定年数で割って維持費の一部として考えるといったことも必要になりそう。たとえば2万ドルの車を買って10年乗るとすれば、一月あたり167ドルかかっていることになる。

食費

食費は概ね想定通り。昼はほぼ完全外食、朝晩はお総菜などに頼った手抜き自炊が中心なのが食費を押し上げている要因で、まじめに自炊して昼は弁当持参にすればかなり削減できるだろうけど、そこまでやる気はないのでここは当分現状維持が目標。

なお、トータルの食費は、普段の食事にお金がかかっている割には実は日本にいた頃とあまり変わっていない(もちろん為替をいくらで計算するかにもかなり依存するが)。これは、日本にいたときのようにお酒をたくさん飲んで二次会にも行って大量に出費、みたいな機会がないからではないかと思う。たとえば、ちゃんとしたレストランでまじめに食事をすればそれなりの出費にはなるが、$100を超えるようなことは滅多にないし、二次会みたいな追加出費の場面もゼロに近いので。(一方、日本で気合いを入れて宴会すると15000円くらいかかることはままある)

医療費

当初計算にまったく入れてなくて、予想外に出費がかさんだのが医療費(アメリカの医療保険のダメさ加減とか医療費の高さとかはある程度知識としては持っていたのだが、それが生活費に与える影響をあまり深刻に考えていなかった)。「高くて複雑な医療費のシステムを実感」のところで書いたが、とにかくコストがかかる。とくに2008年は歯医者の出費がかさんだのが痛かった。日本での医療費と比べて、年にもよるけど2-4倍程度の出費になっている(日本ではその分保険料もたくさん払っていたので、その差を無視するのはちょっとunfairかもしれないけど)。

2009年は、健康保険のところで挙げたようにPPOに移行するつもりで、そうすると医療費の負担も若干増えることになる。ただ、去年の場合は、日本に帰ったときに保険なしで治療を受けてたりとか、mail orderによる安い薬の買い方などがわかってなくて損をした部分もあるので、トータルの出費はそれほど変わらないはず、と思いたいところ。

耐久消費財、その他

「その他」として挙げた項目のうち、実際の費用の内訳は細々した日用品、本、ちょっとした娯楽(映画など)の費用など。

「耐久消費財など」の項は、基本的には緊縮財政下なら省略できそうな費用というつもりで別枠にしている。これに相当するのは、何泊かで行くような旅行とか、最近の例ではForerunner(とっても愛用してるけど、ないと生活できないという類いのものではない)。ここを「その他」から分けたのは、もし一時的に失業などした場合、必須でない費用を削ったとして、単に生活するのにいくら必要かを見積もれるようにするため。

一方、「予想値」としての計算は、以上の2つを区別しないで見積もった値。したがって、そのつもりで比較する必要がある。予想値よりは月当たり$165ほど余分にかかっているが、初年度なので家具その他を一気に買いそろえたりした部分も含まれていて、それを割り引けば概ね予想通りという感じか。

おまけ: 必要な給料の計算

生活費とは直接には関係ないが、ついでなので: 生活費の見積もりを出して、次に考えたことは、必要な生活費を捻出し、雇用の不安定さを補えるだけの貯蓄(投資)余力を持つためには、収入(=給料)がいくら必要か、ということ。その額の給料がもらえないとすれば、リスクを承知で国と職場を変えるという結論は導き難くなる。

生活費は一応わかったこととして、どれだけの貯蓄余力が必要かというのには当然正解などなく、将来に関するある程度の仮定をもとに判断するしかない。当時は以下のように考えた。

とりあえず10年後を想定する。このときまではなんとか職を維持できたとして、そこでクビになり、かつその後がんばってもなかなか再就職できない、という事態でも、それまでに作った資産と、アルバイト程度の補助収入でなんとか食べていけられるラインを目標とする。(もちろん、10年雇用を維持できる保証はどこにもないが、それを心配しはじめると何もできないし、若い年数でクビになった場合は比較的再就職のあてもつきやすいだろうということで、ざっくり10年後まではなんとかなると仮定)

その10年間は給料の増減なしと仮定する。とくに、増えない、ということがポイント。年功序列の日本型システムと違って自動昇給は期待できないので。

さらに、毎年の給料から生活費と税金を引いた部分を将来への投資に回し、年平均6%で運用できると仮定。この利回りは、長期の株式投資を想定した場合での過去の利回りより多少保守的に考えたという以上には特別な根拠はないし、もちろんその保証もない。ただ、ここでも、何らかの仮定をしないとはじまらないので。

以上の条件で、10年後の「目標ライン」を実現するための税引き前収入を逆算する。税金(所得税+social security tax)は、渡辺千賀さんのblog記事などを参考に4割を想定。

こうして求めた値が無謀でないことをシリコンバレーの給与水準の資料で確認。これには、Joint Ventureなるところの Index of Silicon Valleyにあるレポートを参照した。たとえば2007年分のレポートの場合、PDFの24ページ目に職種ごとの平均賃金が載っている(2008年分にはこれに相当するデータはないようだ)。これによれば、Software業界の平均値は14万8935ドルだそうだ。

以上で算出した「想定必要給料」をもとに給料交渉をして、まあ何とかなるだろう、ということで現在こうして暮している。もちろん、当時の仮定の一部はすでに崩れている。とくに資産運用については、当然ながら6%増どころか大幅マイナス。もともとが10年単位で考えた平均だから、単年の結果について波があるのは当たり前だが、当時ここまでの暴落はもちろん想定外だった。人生そうそう計算通りにはいかないのは当たり前と思えば、クビがつながっているうちはこういうものだという楽観もできるが。

ちなみに、当初資産10万ドル、10年後の目標ラインを300万ドルとして、上に挙げた仮定のもとで計算すると、年間の税引き前給与は21万4500ドル42万1360ドルくらい必要ということになり、Index of Silicon Valley記載の平均値と比較してもかなり無謀だということになる(追記: 税金分と生活費を計算に入れるのを忘れていたので修正。修正後は平均値どころかObama定義でのmiddle classの枠すら大幅に飛び越えてしまった…)。まあ、300万ドルもあれば、バイトで食いつなぐどころかearly retirementも可能かも、というくらいなので、これは欲張り過ぎな設定だと言うべきだろう(もちろん、自分ではこんな無謀な夢は見ていない)。

コメント 3 件

  1. t2 Says:

    参考になりますね〜。
    日本にローン付き資産を残さざるをえない我が身としては、シリコンバレーで働くのは難しいかなぁ。
    #結婚したりとかするとよくも悪くも崩れますが 🙂

  2. jinmei Says:

    > 日本にローン付き資産を残さざるをえない我が身としては、シリコンバレーで働くのは難しいかなぁ。

    あれれ、discourageするつもりはなかったんですが。タダでご飯を提供してくれるような会社で働いていれば少なくとも食費はかなり浮きますよ:)

    もう少しまじめな反応としては、確かに、借金があるとなかなか居住国を変えるのは難しいかもしれません。アメリカの給料が額面の割に少ない手取りになる最大要因は税金にあると思ってますが(税率自体が日本よりちょっと高めだし、何よりも控除可能な額が非常に小さい)、家のローンがアメリカで作った借金だったら大きな控除対象なるんですけどね。むしろ、日本側でも住宅ローン控除の恩恵が受けられなくなって実質的に損をすることになりそうですし。

    とりあえず、宝くじでも買ってみるというのはどうでしょうか?:)

  3. 家計簿初め&10周年レビュー Says:

    […] アメリカに来てちょうど1年経った約9年前のblogでは、最初の1年での生活費を渡米前の見積もりと比較していた。その際、一応の中期見積もりとして以下のように考えていたと書いている: […]

コメントを投稿 / Submit Comments



(あれば / Optional):