Jul 29

今年の大目標であるNew York City Marathonに向けてのシミュレーションとして、数十年ぶり2回目(blindランナーのガイドを除く)のフルマラソンに挑戦した。公式タイムは3時間20分17秒(Garmin connectおよびStrava記録もほぼ同じ)、初マラソンはダメダメすぎだったこともあって正確なタイムすら覚えていない(走った年さえも記憶が怪しい)のだが4時間半くらいはかかっていたはずなので間違いなく自己ベスト、さらに2019年のBoston Marathon qualifying time(いわゆる”BQ”)も突破した。ちなみに2018年用ながらChicago Marathon qualifying timeも突破している。タイムも想定以上の出来だが、NYに向けての練習の一環として、タイムよりもしっかり最後まで走ることを目標にしていたので、ほぼイーブンで若干negative splitという内容は合格以上である。


下の地図は5km地点ごとにマークを付けたコースの経路。

下のグラフはGarminで測ったペース・標高・心拍数の記録(Garmin本家のactivity記録はこちら)、表は5kmごとのタイムのsummary。

距離 ラップタイム 累計タイム
5km 23’57” 23’57”
10km 24’00” 47’57”
15km 23’35” 1:11’32”
20km 22’58” 1:34’31”
25km 23’38” 1:58’09”
30km 24’21” 2:22’30”
35km 23’17” 2:45’46”
40km 23’23” 3:09’09”
ゴール 11’08” 3:20’17”

トレーニング

「シミュレーション」とはいえ、出るからにはそれなりの準備をしないと得られるものもないということで、SFマラソンまでにフルマラソンを走れる体になる程度のトレーニングは積むようにした。某Asicsでもらった冊子の「3時間台前半を目指す」20週メニューに概ね沿って、4-5月はスピード養成(各週10kmのスピードペース走を2回に20-25kmのスローペース走1回)、5-6月は走り込み(14kmのやや速いペース走1回と週末に25-30kmのスローペース走)、6月後半から2週間前までは「レースシミュレーション」として最長の32kmをレース想定ペース目標で走って完了。最後2週間は調整期(いわゆるテーパリング)で練習量をぐっと落としてレースを迎えた。スピードまたはロングペース走の日は筋トレも実施、さらにそのあとプロテインを摂取して筋力増強にも努めた。

ちなみに、「3時間台前半を目指す」メニューにしたといっても、初マラソンといっても過言でないほど参照データがないのでこのタイムを実際に目標に掲げていたわけではない。ハーフマラソンレベルの走力からすればこのくらいで走れてもおかしくないだろうとは思っていたが、ハーフとフルではほとんど別なスポーツという感じなのであまり参考にならないし、肉体的にもメンタル的にもフルの距離でどこまでやれるかはかなり未知数だった。ただ、自分の走力に比して低すぎるレベルのトレーニングをしても物足りなさが出たりしてうまくいかないだろうと考えて、結局「3時間台前半」的トレーニングをすることにした。

何よりも故障しないことを重視していたので、基本的に2日続けては走らないようにし(そもそもAsicsのメニュー自体もそうなっている)、走行距離はもっとも長かった週でも60kmを少し切る程度。本番も含めて4ヶ月間の平均月間走行距離は206kmだった。長い距離を走り慣れないうちは25km程度でもかなり脚が止まる感じだったのだが、やはりある程度繰り返すことで耐性がついたのか、トレーニング期間後半には30kmでも割と走れるという感触になり、最後の32km走はぼんやりと想定していた本番ペース(4’45″/km、3時間20分をちょっと超える程度)以内でこなせてだいぶ自信がついた。

レース3日前からはカーボローディング(的食事)も実施。普段はダイエットのために炭水化物は控えめにしているのだが、この3日間は3食炭水化物中心の食事に変えた。

また、かなり早いスタート時間(5:30am)に対応するために、1週間前からは5時おきで朝食前に走るスタイルに変え(普段は週末以外は夕方に走っている)、この時間でも体を動かせるように準備した。

レースプラン

通常ならある程度タイムの目標も持って走るのだが、今回は「しっかり(止まらず・歩かず)走り切る」ことを第一の目標として臨んだ。NYのためのシミュレーションとして考えると、多少の失敗はむしろ歓迎とはいえ、あまり無謀に突っ込んで沈没してしまっては得るものがないので、ペースは少し抑えめに、30kmを過ぎても脚がちゃんと動くように走りたいと考えていた。とはいえタイムやペースの目安も持っていないとやりずらいので、一応3時間30分程度を念頭に、まずは3時間25分のペースグループに入って様子を見て、余裕を持ってついていけるようならそのまま30kmくらいまでは集団の中でじっとして脚を温存しようというプランだった。

トレーニングの内容からするとタイム的には3時間20分前後で走れてもおかしくないという程度の感触は持っていたのだが、最長のロングランでも32kmまでだったので最後に脚が止まる不安は残っていた。またSFマラソンはup/downの激しい難コースだと言われており、一般的なベストタイムから10分程度は余分にかかるという説もしばしば聞いていたのでかなり慎重になっていた。

また、今回はペースを維持することよりも心拍数を一定幅に保つことを意識した。フルマラソンを想定したスロー・ロングランのトレーニングをしていて気がついたのだが、飛ばし過ぎて後半失速するのはもちろんダメとして、ゆっくり過ぎても悪循環的にパフォーマンスが落ちてしまう。トレーニング中の経験では、疲れすぎず、ずるずる下がりすぎもせずに長くある程度の速度を維持できる心拍数が120-130の間くらいということがわかってきたので、今回のマラソンでは心拍数をときどき確認して、通常は130前後、上り坂などでちょっときつくなるようなところで最大140くらいという目安を維持するつもりで走っていた。結果的には平均心拍数が137、全体を通して概ね130から140の間くらいに収まっている(グラフ参照、なお最初に少し上がっているのはwarming upをしない場合だとよくあるパターンなので無視できる)のでほぼ目標通りである。

難コースと言われるSFに対応するために、コースの地図も見て地形も入念に予習した。Stravaに標高差を含むコース図が公開されている(ちなみに今年分はこちら)ので、それと主催者発表のコース・標高図を突き合わせて、どのあたりにどの程度の斜度の坂がどのくらいの長さであるかを把握。誤差程度の小さな坂を除くと大体以下のような地形を想定すればいいということを頭に刻んでおいた:

  • 5マイル過ぎから約1km、Golden Gate Bridge(GGB)まで50mほど上る。ここはSawyer Camp trailの最後の上りと同じ程度の平均斜度
  • GGBを渡ってすぐ、11マイル地点くらいまで700mほど、約40mほど上る。斜度はGGBまでより少しきついけど距離は短い
  • 12.5マイルあたりから27thの長い直線を経てGolden Gate Park(GGP)に入って右折するくらいまで、約2.7kmで45m上る。距離はあるけど平均斜度は低い
  • GGP内でゆるく折り返してから18マイル地点くらいまで、約3.4kmで50m上る。距離は一番長いけど斜度は緩い

ということで、最初2つの坂はきついけど距離が短いので少しだけ気張って上り、残りの2つは斜度が緩くなることを踏まえて長さにめげないように辛抱強く行く、というのが大まかな攻略イメージ。どんなコースでも事前にイメージを持つことは役立つだろうが、up/downの激しいコースではとくにそれが言えると思う。

なお、この予習には実は一つ穴があり、2017年のコースと違って18年のコースにはGGBをSausalito側に渡った後にごく短いながらかなりの急坂がある。2017年のStravaデータをもとに予習したのでこの点を見落としていて、本番でも少し混乱してしまった。来年もまたコースが変わる可能性がありそうなので、同じような方法で予習する際には違いに注意する必要があるだろう。

18マイル(30km少し前)を超えるともう大きな上りはないが、22マイル地点近辺に短いながらすこし斜度のある上り坂があることも頭に入れておいた。余裕のあるうちは誤差のような坂だろうが、このあたりまでくると些細な難所でも心をくじく要因になりかねないのでプランに入れておくのは悪くないだろう。

この坂を除くと、30km過ぎからはほぼ下りか平坦なので、そのあたりで脚の力を確認し、いけるようなら残り10kmはもう少し頑張ってできればペースアップ、というのが大体のプランだった。

レース当日

当日は3時に起きておにぎりとバナナ、少量のグレープフルーツジュースの朝食。4時半過ぎに会場入りして、軽く動的ストレッチしてトイレを済ませてスタートへ。Warming upをするかどうか少し迷ったが、フルマラソンペースならいきなり息が上がるような運動強度でないので、少しでもスタミナ温存することを優先して走ったりせずにスタート。

最初はプラン通りに3時間25分のペースグループに入って様子を見た。3時間25分にしてはやや速いペースだった(坂を意識して最初は少し速く入っていたのかもしれない)が、感覚的にはフルマラソンの距離を考慮してもきつさはなく、また大体イーブンペースで進んでいたので、5マイル過ぎあたりからの最初のきつい坂まではそのままグループにぼんやりついていった。しかし、上りに入る手前くらいのところではずみでグループの前に飛び出る形になってしまった。まだ序盤でもあり、ペースを落としてグループに吸収されるのを待とうか迷ったのだが、体には余裕があったので結局そのまま一人で走ることを選択。この選択は結果的には成功だったのだが、10km地点での余裕は終盤の状態を占うにはあてにならなすぎるという意味で、本来の趣旨からすればもう少し集団で辛抱するべきだったかもしれない。

GGBのあたりで早くも少し尿意を感じてちょっと焦る。実は本番で心配していたことの一つが途中でトイレを我慢できなくなるのではということで、スタート前もぎりぎりまで並んで2度トイレに行っておいたのだが、気温が低いせいもあったのかもしれない。ただ結果的にはその後汗をかいたりして紛れたのか、なんとか最後までトイレを意識することはなくて済んだ。さらに寒くなると予想されるNYではこの点も難題になりそうだ。

タイムはあまり意識しないようにしていたが、Garminで1kmごとのラップはなんとなく確認して、3時間20分程度のペースで走っていることはわかっていた。13マイル地点を過ぎて少しいったところ(13.1マイルが中間地点)でトータルタイムを確認するとほぼ1時間40分程度で、もしかすると3時間20分を切るか切らないかくらいのタイムもありうるかとぼんやり考え、BQが3時間25分というのは知っていたので、この辺ではじめてBostonも頭にちらついた。ただ、目標はあくまでしっかり走り切ることであり、また後半はどうしてもペースダウンがあるだろうから、30kmまではペースに関わらず省エネに徹し、心拍数だけをコントロールして走るように心がけた。

坂の多いコースが難しいのは事実だろうが、心拍数管理の観点ではむしろやりやすい面もあった。走りやすい地形を漫然と走っていると徐々に心拍数とペースが落ちて体がだるくなる悪循環にはまるリスクがあるが、上り坂ではいかにペースが落ちるとはいってもある程度運動強度とともに心拍数も上がるので、意識してペースを上げることなく心拍数の落ち込みを防げる。Garminに表示される心拍数を適宜確認して、上りは140くらいまで(でもそれを超えていくようならペースダウン)、下りは逆に心拍数が下がり過ぎないようにペースを上げるという感じで走って、結果的にわりといいリズムを維持できたように思う。

走り込みの成果も(たぶん)あって、GGP内の上りでも気持ちがくじけることはなく30kmに到達。さすがに脚の疲労は感じつつあったが、主観的にはまだ力が残っている感触はあり、ここまでの距離をまずまず「寝ていく」ように走れていたので気力も残っていた。あとはアクシデントがなければ走り切る目標は達成できそうという確信を深め、20マイル(32km)を超えて残り10kmになったところからは力を入れて走るモードに転換。

ところで、ハーフマラソンくらいまでなら極端には給水さえなくてもそれなりに走り切れるが、フルともなると給水はもちろん、エネルギーも補給しないと厳しいので、ハーフとはまったく違うプランが必要になる。某氏のアドバイスも参考に、給水についてはごく序盤から基本的にすべてのaid stationで水を取って少量ずつ飲むようにし、さらに取れるときは水ではなくスポーツドリンクを取るように心がけた(塩分補給のため)。また1つあたり100kcalほど補給できるenergy gelを3つ携帯し、概ね10kmごと、平坦か下りになったところで1つずつ摂取。具体的には、GGB往路の頂上付近、GGPに入ってすぐの上りが終わったところ(14マイルくらい)、GGP後半の上りが終わった20マイル地点くらいで摂取した。トレーニング中の経験から、上りで息が苦しいときにはgelを飲むのも大変ということがわかったので、gel摂取は平坦な場所ですると決めていた。さらに、最後の痙攣防止のためにGGPの坂を登りきって30kmが近づくくらいのところで塩分補給の錠剤を飲んだ。自分自身の体を対象にした比較材料がないのでこれらが効いたのかは結局わからないのだが、結果として言えば「脚が棒になる」感じもなくひどい痙攣が起きることもなかったので、少なくとも失敗ではなかったのだろう。

20マイルを超えて力を入れ始めてからはペースも若干上がり、それでも脚が動いている感じもあって快調に走っていたのだが、後から思うと20マイル地点くらいまでの急な下りで少し脚にダメージを与えてしまったのかもしれない。35kmくらいからもともと持病的に問題のある右股関節に少し痛みが出て、さらに左脚の腸脛靭帯のあたりにも鈍痛が発生、これで少しペースダウンを余儀なくされた(というか、シミュレーションであることを考えると本当ならこういう痛みが出ない範囲で走るべきだったと思うが)。それでもがっくりとペースを落とすことはなく、痛みのある箇所もなんとか制御できそうな程度だったのでそのままのペースを維持。

23マイル地点を超えるとあとはほぼ5km、24マイル地点でほぼ3km、かつ知り合いグループがスイカ補給のボランティアをしている地点まで1km弱、さらにそこを超えたらあと2kmほど、という感じで小さなゴールをクリアしていく感じで気力を維持した。この辺が一番きついところという説をよく聞くが、脚はさすがに限界に近い感じになっていたものの気力が続いていたので個人的にはきついという感じはなく、ゴールが着実に近づいてくる充実感で走っていた。

終盤になってもタイムはそれほど意識していなかったが、1kmあたりのラップの推移から3時間20分程度のペースを維持できていることはなんとなくわかっていた。25マイル地点で時計を見るともしや20分切りもあるかもというタイムで、そこから精一杯頑張ったものの、ついに脚も痙攣気味になり、結局20分を少し超えたところでゴール。

3時間20分切りはならなかったが、レース全体を管理して最後までしっかり脚を動かして走るという目標は達成できたので十分満足である。とくに、35-40kmの5km(ほぼ平坦)を全体の平均ペースより約20秒速い23分23秒でカバーできたことが自信になった。記録を狙っていくなら前半からもう少し突っ込むべきなのだろうが、今回の趣旨からいえば終盤にペースアップできるくらいの内容でほぼ満点である。また、結果としてのタイム的にも、客観的に見て3時間20分台ならむしろ出来過ぎというところだろう。さらに、Garmin connectのデータによれば、上下動やケイデンスなどの測定値も終盤まで安定していたようだ。これまでだと長い距離の終盤にはこれらが悪化することが多かったのだが、今回はこの点も合格だった。

これまではフルマラソンを走り切った場合の自分の実力の具体的なイメージが湧かなかったのだが、今回の結果でかなりはっきりと現状を捉えられたので、今後もあくまで健康第一をこころがけつつ、NYではもう一レベル上の結果を目指して頑張りたい。

コメント 1 件

  1. NY City Marathonデビュー Says:

    […] York City Marathon(NYCM)に出場。公式タイムは3時間16分19秒、7月のSan Francisco Marathon(SFM)で出した自己ベストを約4分更新、5分繰り上がった2020年のBoston Marathon […]

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