最近見た刑事コロンボシリーズ

魔術師の幻想 NOW YOU SEE HIM

クラブの人気手品師が、経営者に過去の経歴を握られていることを苦にその 経営者を殺害。自分のショーの間のわずかな時間をアリバイに利用する。コ ロンボは、非常に強固な部屋の鍵が破られていたことから犯人に注目する。 コロンボによく見られる、ラストの大掛かりな罠がないせいか、終盤は若干 地味な感じもするが、論理展開にも無理がなく、十分納得できる結末。中級 のでき。


権力の墓穴 A FRIEND IN DEED

コロンボの属するロス警察署長の友人がはずみで妻を死なせてしまう。相 談をもちかけられた署長が、事後工作をしたことを利用して自分の妻を殺害、 そのアリバイ作りに友人を利用する。おしこみ泥棒に帰着させようとする署 長の心理を利用したコロンボが罠を仕掛ける。

署長の妻殺しがあまりにも稚拙でいまひとつ迫力を欠く。たとえば、解剖す ればすぐにわかるはずなのに浴槽で溺死させた死体をプールに投げ込んでい るなど。ラストは割とよいできなので、トータルではまあふつうのできか。


殺人処方箋 PRESCRIPTION: MURDER

シリーズ第1作。この時点ではタイトルも"Columbo"ではなく、単なる "PRESCRIPTION..."だった。

精神科医が、愛人と共謀して妻を撲殺。愛人に妻の変装をさせてアリバイを 作る。殺したはずの妻が実は一命をとりとめていて、しかも意識が戻ったと 知ったときの犯人の表情、そして証拠になるような言葉を残さずに生きたえ たと知らされた安堵の表情に至るまでのシーンが実に印象的。犯人を予め視 聴者に示した上でストーリーをすすめる、コロンボシリーズの醍醐味がここ に現れている。ラストの仕掛けも申し分なく、第一作目にしてコロンボのすべ てが詰まった一作とすらいえる。


死者の身代金 RANSOM FOR A DEAD MAN

女性弁護士が高齢の夫を殺害して死体を遺棄し、自作自演の誘拐事件に見せ かける。身代金を詰めたバッグをすりかえて、空のバッグを飛行機から投下 したところまではよかったが、コロンボに協力した養子の脅迫によって、隠 してあった身代金に手をつけてしまったことから追い詰められる。

ほぼ完璧な犯行を遂げた犯人にしては、身代金に手をつけてしまうというの はちょっといただけない。全編にホラー的な凝った演出が施されているが、 プロットはそれに負けてしまった感がある。


黒のエチュード ETUDE IN BLACK

オーケストラの指揮者が、愛人に離婚をせまれらたことで自殺にみせかけて 愛人を殺害。現場に忘れた花が演奏中についていなかったことが決め手に なる…が、ちょっと決め手としては弱いような。まあふつうのでき。


ロンドンの傘 DAGGER OF THE MIND

うだつのあがらない俳優夫婦が、劇場のプロデューサーを利用して自分達を 主演の演劇を開催させる。それを知ったプロデューサーをはずみで殺害して しまう。プロデューサーが現場に残した傘に犯人のネックレスの一部がまぎ れこんでいる、として追い詰める。

コロンボでは、第二の殺人があるタイプの話は、最初(かつ、ふつうは唯一) の殺人が周到に計画されている(ことが多い)ため、どうしても弱い感じがし てしまう。つまり、第二の殺人を犯さざるを得なくなった時点で犯人は十分 追い詰められていて、コロンボの手腕がなくてもいずれお縄になってしまう というような程度の犯行に落ちてしまうことが多いようだ。この作品も例に もれない。その割にラストシーンではぎりぎりのしかけを使って犯人を追い 詰めているが、そこまでやる必要あるか…という疑問は残る。65点くらい。


別れのワイン ANY OLD PORT IN A STORM

ワイン工場の鑑定家が、工場を経営する弟を撲殺。ワイン蔵に死体を置いて 死亡日時を遅らせ、アリバイを作る。その期間にワインがだめになったこと を知った犯人がワインを海に投げ込むシーンが印象的。もっとも、このこと 自体は殺人の証拠としては決め手に欠けるが、秘密を知って結婚をせまる秘 書という存在が説得力を生んでいる。名作のひとつ。


野望の果て CANDIDATE FOR CRIME

選挙運動中の政治家が、自分自身に対するテロを演出し、それを利して友人 の選挙参謀を殺害する。犯人の政治家は壊れた時計を用いてアリバイを構築 するが、コロンボは細かな不審点を詰めていくことで犯人を追い詰める。

ラストで、犯人が「自分が狙われている」ことを示すための狂言をする。こ れが仇となって最終的な証拠になるが、この狂言自体はあまり必然性ない 行き過ぎの感があり、ややマイナス。


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Last modified: Fri May 7 13:46:37 1999