Jan 10

年末年始で資産の構成を見直そうとしていて、「通常だとwash saleとみなされる形で売却した資産を税優遇口座(たとえばIRA)で買い直した場合もやはりwash sale扱いになる(ため損失計上できない)のか?」というのがふと疑問になったので調べてみたところ、またしてもアメリカ税制の複雑怪奇さに遭遇するハメになった…

まず、上で「*たとえば*IRA」と書いたが、(traditional)IRAおよびRoth IRAについては”wash sale扱いになる”が正しい(上にリンクしたIRS Pub 550の該当箇所にも明記されている)。ちなみに、この場合課税口座で買い直した場合であればここでの損失分を新規購入分のbasisに足して将来の売却益から実質控除できるが、IRAで買い直してしまった場合はそれもできなくなる。そもそも課税口座の場合のような意味でのbasisという概念が存在しないし、non deductible拠出分と同等の扱いで非課税対象にするということもできない。Roth IRAの場合であっても”non qualified distribution”として損失相当分に課税されてしまう模様。というわけで、うっかりIRAで買い直すとwash saleとなって損失計上できないばかりか将来余分に課税されることになり、(損失額部分の税金処理という点に関して言えば)何もいいことはなく、どうせwash saleになるなら課税口座で買い直すほうがマシ、ということになる。

まあこれでwash saleを迂回できるなら明らか過ぎるloopholeだから、さすがにこんなのは認められないだろう、ということでスッキリ、と思ったのだが、よくよく読むと、Pub 550はIRAとRoth IRAを名指ししていて、たとえば401(k)で買い直した場合はどうなるのかは不明(というかIRAだけを名指ししてダメといっていて一般化していない以上他の優遇口座ではOK)というようにも解釈できる。

そこでさらに”wash sale 401k”などでぐぐってみると、お上によるずばりの答えは(少なくともすぐ目に入る範囲内の検索結果には)見当たらず、web上の他のソースでは見解が分かれている模様。たとえばBogleheadsのwikiではさらりと401(k)もIRAと同列に並べられて(wash saleが適用されると言って)いる。一方、Yahoo! answersの”best answer”はさらりと”wash saleは適用されない”と言っている(まあこの回答者の理解レベルはちょっと怪しい気もするが…)。

検索して見つかった情報の中では、どこかのCPAが書いたblogが一番納得できた。まず、IRAについての扱いを定めた2008年のIRSの決定(PDF)を指して、これがIRAを名指ししていて401(k)について何も述べてないことを指摘している。また、この人の知る限りでは401(k)の場合について明記した公式の情報はないとも言っている。その上で、2008年の決定に至った根拠は401(k)にも適用できると考えるのがほぼ明らかなので、401(k)での買い直しならwash saleにならないと仮定するのは危ないとの意見を述べている。

2008年の決定の中に出てくる裁判のところの下りあたりから推測すると、名目上の購入者がもともとの売却をした個人でない(たとえばリタイアメント口座関連の”trust”)としても、実質的にその個人がどの資産をいつ買うかが指示できるようになっていればwash saleの要件を満たす、という理屈らしい。そこでもう一つ推測すると、401(k)の場合だと、口座の持ち主が管理会社に運用を丸投げしているような場合もあったりして、その結果としてたまたま同種の資産を同時期に買い直す形になっていたりする(ことも多い?)かもということで、あえてこの決定の範囲、およびそれを受けてできたと思われる現在のPub 550には401(k)が指定されていないのかもしれない。

筆者の場合だと、とくにごく最近401(k)もVanguard扱いになって、取り扱いファンドもVangurdの普通のファンドが結構普通に並んでいたりするので、選択肢が狭いだけでIRAと同等に扱われると考えるほうが安全と思われる。

401(k)の場合の扱いが公式にどうなのかについては依然ややモヤモヤするものの、これで一応スッキリできた。しかし、そもそもwash saleの概念からして複雑怪奇(たとえば日本の譲渡損にはこういう制度はないはず)なのに、IRAで買い直すとさらに不利とか、IRAと401(k)の扱いの差が曖昧とか、アメリカの税制の複雑さは病的である…

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