実は今年の確定申告で恐れていたことの一つが、Underpayment of Estimated Tax Penaltyを課せられるのではないかということだった。毎回の給与からはfederal, stateともに源泉徴収のような形で税金が天引きされていたが、これ以外にも利子・配当・印税とかいった所得があり、しかも日本と違ってこれらは所得発生時に税金が源泉徴収されることがない。最終的な確定申告の段階で、実際に支払うべき税金が給与からの天引き分に比べてある程度以上大きくなると、差額に加えてpenaltyを払わないといけなくなる、ということは何となく知識として持っていたのだが、給与に加えて具体的にどのくらいの所得が発生するとpenaltyが生じるのか、またそれはどのくらいなのかといったことをちゃんと確認しないまま年が明けてしまった。
結果的に計算してみたらpenaltyにかかる状況ではなかったが、来年(というか今年か)に向けてこの機会に各種条件を整理しておいた方がよさそうだ。ということでまじめに計算してみた。
Penaltyを課せられる条件には細かい例外規定もあるようだが、IRSの解説ページによれば
- 天引き分との差額が$1000以上、かつ
- 当年の確定納税額の90%もしくは前年の確定納税額のうちの小さい方より、天引き分が少ない
場合にpenaltyが発生するようだ。Penaltyの額は、それ用のフォームであるForm 2210をさっと眺めたところでは、差額分の3.571%。
また、Californiaのstate taxにも同様のpenaltyがあり、その条件は
- 天引き分との差額が$200以上、かつ
- 当年の確定納税額の90%もしくは前年の確定納税額のうちの小さい方より、天引き分が少ない
というもの。
これらを回避するための条件を知るには、所得が給与だけだったとした場合の天引き額をもとに、penaltyが発生しはじめる総所得ラインを求める必要がある。ここでは、給与が年10万ドル、AGIはそれのみの単身者という場合で計算してみる。
Federal taxの天引き額の計算方法はPublication 15というガイドの36ページ目以降に載っている。これに従うと、
Federal 天引き額 = $16750 + $84300を超える控除後額面給与の28% = 16750 + (100000 - 3650 * 2 - 84300) * 0.28 = $19102
ここで、「控除後額面給与」というのは額面の給与(10万ドル)から人的控除に相当する天引き用の控除額(withholding allowance)を引いた値。withholding allowanceは仕事に付くときに提出するW-4というフォームの情報をもとにして決める。給与外の所得がある場合などを見越して多めに申告することも可能だが、ここでは単身という条件から自動的に決まる標準の控除額を適用している。
上に挙げたpenaltyの条件からすると、実際の納税額が19103.04 ÷ 0.9 = $21224.44以上になるとpenalty発生ということになる($1000超の条件はすでに満たされている。前年の納税額との比較は簡素化のため無視)。
California state taxの天引き額も計算方法は大体同じで、California Withholding Schedulesというinstructionに沿って計算する。
State 天引き額 = $2071.76 + $47055を超える控除後額面給与の9.3% = 2071.76 + (100000 - 198 - 47055) * 0.093 = $6977.23
Penaltyが発生するのは実際の納税額が6977.23 ÷ 0.9 = $7752.47以上になった場合。
なお、Publication 15などの計算表では、毎回の給与からの天引き額を計算するために、給与の支払形態(たとえば毎月2回)ごとの表が示されているが、どれで計算してもほぼ同じ値になるようなので、ここでは年一括払いの表を使って一年分の総額を計算した。また、州税部分の計算式は実は実際の税金の計算式とほぼ同じ。違うのは人的控除分が2倍になっている(普通の単身者だと半分の$99になる)ところくらい。なぜ天引きの計算で多めに控除してるのかはよくわからない。
次に、実際にpenaltyが生じる場合の所得額を計算する。まず、Federalの方はForm 1040 instructionのtax tableから、確定税額が$21224.44を超える課税対象所得を逆引きする。結果は$97300。
Federal課税対象額 = AGI - 項目別控除(州税天引き分) - 人的控除 = 給与 + 追加所得 - 項目別控除(州税天引き分) - 人的控除
なので、penaltyを生じさせる追加所得額は
課税対象額 - 給与 + 項目別控除(州税天引き分) + 人的控除 = 97300 - 100000 + 6977.23 + 3500 = $7777.23
(なお、ここではqualified dividendsやlongterm capital gainによる優遇税率は考えていない)
次にstate taxについて。Penaltyが発生する課税対象所得は、
税額(7752.47) = $2071.76 + $47055を超える部分の9.3% - 人的控除(credit) = 2071.76 + (課税対象所得 - 47055) * 0.093 - 99
という関係から、$109202.42。さらに、
課税対象額 = AGI - 標準控除 = 給与 + 追加所得 + 標準控除 = 100000 + 追加所得 - 3692 = 96308 + 追加所得
なので、109200.27 – 96308 = $12894.42の追加所得があるとpenaltyが発生する。
仮に資産の3%が追加所得になるとすると、penaltyが生じるにはfederalの場合で25万9241ドル、stateの場合で42万9814ドル以上の資産を有しているという条件になる。
なお、federalの方は、上の計算ではかなりいろんな条件を簡略化していたが、qualified dividends等の優遇税率や、追加収入の一部が日本源泉だったりした場合のForeign Tax Creditの効果などでpenalty発生ラインを押し上げることが可能なので、実際にはもう少し余裕があるだろう。たとえば、仮に追加収入がすべてqualified dividendsによる15%の優遇税率の対象になるとすれば、penaltyが生じる追加所得ラインは$14529と、倍近くになる(この例では通常の税率は28%の枠なので、それとの比を考えればほぼ明らかだが)。
とはいうものの、Bush優遇税率がいつまで続くかわからないということもあるし、印税みたいなおまけ収入が入ることもあるし(総額1万ドル前後という文脈では雀の涙といえども無視できない)、給料が上がらない一方で資産運用を頑張っていくと、気がついたらpenaltyを課せられていたなんてこともないとはいえない。AMTについては自分には関係なさそうという結論だったが、Underpayment Penaltyについてはうっかり食らわないように注意しておく必要がありそうだ。
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