Mar 31

悪名高いReport of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)とForeign Account Tax Compliance Act (FATCA)では、アメリカ外の生命保険でキャッシュバリューのあるもの(貯蓄型とか解約戻り金があるもの)はいずれも報告対象の資産ということになっている。ここで、その保険の契約者が税法上のアメリカ人である場合は契約者に報告義務があるのは明らかのようだが、契約者が外国居住者で保険の受取人がアメリカ在住である場合に受取人に報告義務があるのかが今ひとつはっきりしないので調べてみた。筆者の調査の結果によれば、単なる受取人はFBARとFATCAのいずれについても報告義務はない、というのが結論である。

4/2追記: もしかすると曖昧だったかもしれないので補足すると、これは保険金が支払われる前の加入中の段階での報告義務の話である。保険金が実際に受取人に支払われた後は、その入金された口座についての報告は(金額の条件を満たしていれば)当然必要だろう。(金融機関への入金ではなく現金で手渡しされたりした場合は免除されるのかもしれないが、いずれにしても普通の人はそんなことはしないだろう)

まず、FBARに関しては、比較的公式っぽい文書として見つかった範囲では、2011年のFederal Register(PDF)なる文書に以下の記述があり、契約者と受取人のどちらに報告義務があるのかという問いに対して前者であると答えている(受取人に義務がないとは書いてないが、文脈的にはそう解釈するのが妥当だろう)。

FinCEN also received a comment seeking clarification as to whether the obligation to file the FBAR in the case of life insurance rests with the policy holder or the beneficiary. FinCEN would like to clarify that the obligation in such a case rests with the policy holder.

FATCAについては、筆者が調べた限りではこれほどはっきり明記されている文書は存在しなかった(公式・非公式問わず)。FATCA用のformであるForm 8938のinstructionにおける”Interests in Specified Foreign Financial Assets”によると、

You have an interest in a specified foreign financial asset if any income, gains, losses, deductions, credits, gross proceeds, or distributions from holding or disposing of the asset are or would be required to be reported, included, or otherwise reflected on your income tax return. (その資産の保有や売却による所得や保険金(proceeds)が生じた場合に確定申告(tax return)での報告が必要になる場合には、その資産に対する権益を持つ)

とだけ定義されていて、かなり曖昧である(ちなみに生命保険について具体的に説明している個所はここにはない)。ここではまず、受取人がその保険契約を保有(holding)しているとみなされ得るのか、また実際に保険金を受け取ることになった場合にそれは売却(disposing)の一種とみなされ得るのかが問題になりそうだが、これらはこのinstructionからだけでは判然としない。ただし、とくに生命保険に限っていうと、少なくともtax returnに関する条件が成立しない(生命保険の保険金は(一般には)課税対象所得でなく報告の必要もない)ので、単なる受取人がその保険契約へのinterestを持っているとみなされることはなく、したがってForm 8938の提出も必要ないと言えそうである。

以上の調査のもとに、実際に日本の某保険会社に問い合わせてみたところ、受取人はFBARもFATCAの報告も必要ないという回答であった。もちろん、当局からの正式なお墨付き回答をもらったのとは違うので、そもそもの解釈が間違っている可能性もあるし、個別の契約内容によって事情が変わるという場合もあるかもしれない(たとえば、FBARでは信託(trust)の場合は条件によっては受取人にも報告義務があることになっているので、信託型の生命保険になると微妙かもしれない)。したがって、筆者はこの結論についてまったく責任は持てないが、他に同じような疑問を持つ人もいるかもしれないので参考までに調査結果を公開してみた。もしどこかに間違いがあればご指摘いただけると幸いである。

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