Oct 08

以前、PFIC stockを相続してしまった場合についての筆者の調査結果をまとめたのだが、それについての追記。国際税務を扱う事務所の人(らしい)がPFIC関連の話題について隔週で出しているメールマガジン(あまりにマニアックな題材…)があり、筆者は勉強のためにこれに登録している。その最新号がまさにこの相続問題を扱っていた。

この内容によると、前回のblogで書いたstep-upに関する筆者の理解は根拠も含めて正しいようである。

それに加えて、筆者自身が思い至らなかった点についても解説されていた。「非居住外国人から相続したPFIC stockの相続人の保有期間はどうなるのか」ということである。このひとつ前の号では、同じ問題について被相続人が(税法上)アメリカ人である場合が扱われていて、それによれば、このケースでは被相続人の保有期間を相続人が引き継ぐのが原則らしい(お気の毒様なことである…)。ただし、それについての記載はproposed regulationにしかなく、その法的な効力をどう解釈するかはかなり微妙なようだ(proposed regsの位置づけについてはPFIC税制全般について書いたエントリでも触れた)。

一方、被相続人が非居住外国人だった場合、このメルマガの解説によれば、proposed regulationsも含めて税法で明記された規定はなく、”general rules”によって決定されると考えられるらしい。その一般の場合として参照されているのがIRC Section 1223(9)で、その(B)によれば、「basisがstep-upされた資産を被相続人の死後1年以内に売却した場合は、保有期間が1年を超えているものとみなす」ということになっている。これは、PFICではない通常の株式のような場合に、相続後すぐに売却したとしても長期キャピタルゲインの優遇税率が適用されるようにするという一種の優遇措置だといえる(なお、相続後実際に1年を超えて保有すればいずれにせよ長期扱いになる)。ところが、相続したのがPFIC stockである場合、保有期間が長期になってよいことは何もない。そもそも保有期間に関わらずordinary income扱いであるし、期間が1年を超えていればゲインがexcess distributionとみなされて最高税率と延滞利子のペナルティを受けることになる。また、それを受け入れるにしても計算のためには具体的にいつからなのかが決定できないといけないが、「1年を超えているものとみなす(considered to have held such property for more than 1 year)」という曖昧な表現ではその点でも困ることになる。

メルマガの著者は、個人的な見解として、IRC 1223(9)の規定はそもそも優遇のためであり、一方でPFICの税制は基本的に優遇を受けられないようにする趣旨でできていることから、ここではIRCの規定を字面通りあてはめる必要はないのではないかと言っている(明記はしていないが、その場合は相続した日が保有期間のはじまりとみなされるのだろう)。また、この曖昧さによるIRSの対応の揺れを気にする場合は、あえて1年を超えて保有しIRC 1223(9)の規定外とする選択肢もあるだろうとしている(ただしその場合、売却年より前の保有期間について超過税率と利子を払わなければいけない)。

筆者は、それに加えて、もしそのPFIC stockがmarketableであるなら、mark-to-market electionをしておく手もあるのではないかという気がしている(marketableやmark-to-marketについては前回のblog参照)。このとき、もし前回のエントリでも書いた”transition rule”と同等の措置が相続年に適用されるのなら、仮にその年のうちに売却してIRC 1223(9)が適用されたとしても、実質上はstep-up後のbasisと売却額の差額分についてordinary incomeとして課税されるだけで済みそうな気がする。また、この場合は、1年超保有してから売却してもexcess distribution扱いは防げるはずである。途中の含み益(あれば)に毎年課税される問題は残るが、1年経ってすぐに売るつもりでいるなら税金の一部を前払いすることにはなるものの許容できる場合も多そうだ。ただし、メルマガの著者同様、筆者は「法律家でもなければ立法者でもない」ので、この見解の妥当性についてはまったく保証できない。

PFIC税制についてはかなり調べたつもりでいたのだが、まだこんな罠が残っていたとは、おそるべしである…。

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