Oct 13

今年最大の目標だったChicago Marathonに出場。主催者記録では3時間6分7秒、去年のNYで出した自己ベストを10分以上更新し、2019年の目標に据えてきた3時間10分切りも達成した。Overallで45833人中2657位(上位5.8%)、Age groupでは3532人中262位(上位7.4%)であった。

Chicagoは高低差ほぼゼロの高速コースとして知られており、年による差が大きい気象条件も今年はほぼベスト(気温10℃弱の曇り、風は若干あるもののそこそこ)という運にも恵まれて、目標タイムを大きく上回る結果が出せた。ちなみに女子ではあのRadcliffeの記録を1分以上も更新する世界新が出ていて、いかに好条件だったかがわかる。

内容的にも、前後半の差分が+13秒、レース全体を通しても概ねイーブンペースをキープして、35kmからは少しペースを上げ、痙攣等のトラブルもなくゴールという感じで、満点に近いできだった。敢えて欲を言うなら、結果としてはまだ少し余裕が残っていたのであと1分くらいは縮められないこともなかったか、という点くらいだが、それは望みすぎというものだろう。

実力・年齢的に、大きな故障等の危険を冒さずに実現できる上限が3時間一桁くらいだろうと思っていたので、それを達成したことでフルマラソンへの挑戦もこれで一区切り付けられそうである。

統計情報

コースは下の図の通り。青→緑→赤という経路になる。拡大していくとわかるが、スタート後しばらくと中間点のあたりはビルの影響でGPSの位置情報にかなりの誤差が出ている。

下のグラフは恒例のGarmin計測ペース・標高・心拍数の記録。GPS誤差のために距離は相当長く出てしまっている。最高点(187m)と最低点(172m)の差が15m、標準偏差が3.12と、噂通りのフラットさである(ちなみに標高は気圧計を使って測っていてGPS精度の影響は受けていないはず)。ペースが激しく揺れているところはGPS精度が悪かったあたりなので無視すると、全体にほぼイーブンペース、4分30秒/km(ちょうど3時間10分のペース)を少し切るくらいで走り通していることがわかる。心拍数は、序盤はベルトが十分に湿っていないせいで不正確になっていると思われるが、安定した後は概ね120台半ば、後半1/3がほぼ130くらいで収まっている。NYVancouverの過去2回のマラソンと比べるとかなり低い値で済んでいる。筆者の場合、心拍数で130を切るくらいになるとかなり余裕を持って走れるので、この余裕が安定したペースにかなり寄与していたと思われる。

以下は主催者発表による5kmごとおよび中間地点でのラップとスプリットタイム。比較のために3時間10分をイーブンペースで走った場合のスプリットタイムと実際のスプリットとの差分も併記している。

距離 ラップ スプリット 3:10のスプリット
5km 21:57 21:57 22:30 (+0’33”)
10km 21:47 43:43 45:00 (+1’17”)
15km 22:06 1:05:49 1:07:30 (+1’41”)
20km 22:15 1:28:03 1:30:00 (+1’57”)
中間点 1:32:57 1:34:56 (+1’59”)
25km 22:21 1:50:23 1:52:30 (+2’07”)
30km 22:13 2:12:35 2:15:00 (+2’25”)
35km 22:24 2:34:59 2:37:30 (+2’31”)
40km 21:47 2:56:45 3:00:00 (+3’15”)
ゴール 9:23 3:06:07 3:09:53 (+3’46”)

平均ペースは4分25秒/km(7分06秒/mi)になる。

40kmまでの各5km区間を比較すると、最速と最遅のラップ差が37秒(7.4秒/km)。平均(22:05)からの差がそれぞれ18.5秒。完璧なイーブンペースというにはややバラけているものの、前後半の差は13秒(0.62秒/km)、5km過ぎからはほぼ一人でペースを作って、とくに意識せずに流れに任せていた割には上出来だと思う。ちなみに、30km地点のスプリット(2:12:35)も30km走とした場合の自己ベスト更新である。

Garminの各種センサーで測ったデータからは、以下のようなことがわかる:

  • 平均心拍数は131/min。トレーニングでもこのくらいの値を目安としていたので、想定通りのeffort levelだったと言える。また、気温が低かったことも心拍数をあまり上げずに済んだ要因の一つだと思われる。
  • 平均ケイデンスは195/min。これも概ねトレーニング中の値と同程度。ラップごとの平均を見ると192-198の間におさまっていて、全体を通して安定したリズムで走れていたと言える。
  • 平均ストライドは112cm。これは昨年のNYと同じ値で、やや意外な結果。大体同じくらいのペースだったトレーニングの32km走では116cm出ているし、これまでの経験ではVaporfly(後述)を履くとストライドは大きくなる傾向があったので、なぜこんなに小さかったのかは不明である。ただ、ビル群の影響で距離が関係するデータにはちょっと怪しい部分もあるので、それで不正確な値になっているのかもしれない。単純にmarathon distanceの42.195kmをケイデンスとタイムから求めた総歩数で割ると116cmという結果になる。同じ方法でNYの場合を計算すると113cmなので、やはり多少はストライドも伸びていたというのが実際かもしれない。
  • 上下動(vertical oscillation)の平均は7.4cm。トレーニングの最後の方ではやや高めの値が続いていたことや、Vaporflyが上下動値を大きくさせる傾向があったことを考えると意外によい値だった。これも原因は不明だが、フラットなChicagoのコースのおかげで上下動値が安定していたということはあるのかもしれない。ラップごとの値でも7.1-7.6cmの幅に収まっている上に大半のラップでは7.4-7.6cmの範囲内で、非常に安定していた。
  • 接地時間の平均は230msと、トレーニングの目安にしていた220台前半よりはかなり悪いのだが、左右のバランスは平均でちょうど50%ずつで完璧だった。以前から右のほうが長く出る傾向があって、バランスを改善するべくいろいろやっていたのだが、これまた原因は不明ながら本番前数週間くらいから急によくなってきて、本番でもその傾向を踏襲した形になった。パフォーマンスへの直接的な影響はそれほどでもないかもしれないが、故障予防のような観点ではバランスが取れている方が望ましいだろうし、左右の脚への負荷が均等になることで後半の疲れを軽減させる効果もあったかもしれない。

3時間一桁を目指す戦略

去年のNYの結果を受けて、2019年はフルマラソン3時間一桁を目標に掲げたものの、当時の感覚では手が届かないというほどではないもののそこに到達する具体的なイメージが湧いてこないという状態だった。もっと若い頃なら単純にトレーニング量(and/or質)を増やすという直球勝負で挑んだところだっただろうが、歳を重ねてすっかり故障がちな体になってしまったいまとなってはもっと総合的な対策が必要である。具体的には以下のあわせ技で3時間10分突破を目指すことにした。

  • トレーニングレベルの底上げ。いくら他で工夫を凝らしてもこれは避けられない。トレーニングについては後述。
  • ダイエット。筋力を落とさないのが前提だが、長距離走のようなスポーツでは体重が軽い方が有利なのは明らかだろう。俗説だが減量1kgあたりフルマラソンで3-5分縮まるというような話はよく聞くところである。極端に摂取カロリーを落とすようなダイエットはしなかったものの、Chicagoに向けたトレーニングが本格化してからは炭水化物を控える食事を続けて、昨年末に60kgだった体重を7月半ばで57.5kg、9月頭には56kgを切るところまで減らすことに成功した。体組成計の数字なので絶対値はあてにならないものの、体脂肪率も一桁台に突入するところまで到達した。
  • NIKE Vaporfly 4%の導入。「4%速くなる」という謳い文句の魔法のシューズで、レースでは石を投げればVaporflyユーザに当たるというくらいまでに流行した。一昔前の筆者であれば、天の邪鬼ぶりを発揮して、あえて流行に背を向けて記録更新することにこだわったりしていそうだが、総力戦で臨むからには利用できるものはすべて利用するという精神で春頃に購入。トレーニングで何度か効果を試した上で、本番でも投入することにした。

トレーニング

2019年に入り、10月のChicagoで目標を達成するために、そこまでのトレーニング期間を大まかに2段階に分けることにした。5月頃に一度ステップレースとしてフルマラソンを走ってまずサブ3時間15分を達成し、その後少し休養して6月くらいからChicagoに向けてのトレーニングを積むというものである。ステップレースとしては5月上旬のVancouver Marathonを選択。しかしそのときのblogにも書いた通り、直前に比較的大きな故障をしてしまったこともあって完走がやっとという結果であった。

5月の残りの期間は概ね休養し、6月に入ってからいよいよChicagoに向けて本格始動…と思ったのだが、ここでまたしても故障に悩まされることになる。ときどき思い出したかのように再発するアキレス腱痛(今回は左)がまたしても発生。当初の感触では中4日程度でなんとか回復した昨年10月頃と同じ程度と思ったのだが、その後もなかなかよくならず、結局短い距離をゆっくり走れるようになるまででも3週間ほど棒に振ってしまった。7月に入って週に3回程度は走れるようになったものの、相変わらずリハビリ走の状態が続き、ある程度まともなトレーニングができるようになった頃にはすでに7月後半になっていた。

ということで出だしから躓いてしまったのだが、3時間一桁を目指すトレーニングでは、これまで利用してきたAsics製練習メニューの最高レベルである「サブスリーを目指す」メニューを採用するつもりでいた。このメニューでは、主要な強化期間が以下の3期に分けられている:

  • スピード養成期(5週間): 各週に12kmのスピード走2回、20-25kmのロング走1回
  • 走り込み期(6週間): 各週に16kmのスピード走1回、25-30kmのロング走1回
  • レースシミュレーション期(3週間): 各週に12-16kmのスピード走1回、37km走2回

上記「ポイント練習」以外に、週に1,2回7kmの調整的ジョグがあるというのが基本内容である。「シミュレーション期」の37kmはさすがに負荷が高すぎと思ったので、当初プランで35kmと32kmを各1回ずつ、さらに実際には途中の故障もあって32km走が2回ということになった。

スピード走の負荷は心拍数で調整して、後半には140台半ばくらいの状態まで上げてそれを維持するくらい、ペースの目安で4’10″/km前後を想定していた。一方、7kmのジョグや週末のロング走では、フルマラソン3時間10分のペースである1キロ4分30秒を意識して、それより少し速いくらいのペースで走るように心がけた。また、走らない日のジムエクササイズとしてやっているEllipticalは、これまで15分だったのを20分に伸ばすことにした。ポイント練習の日は筋トレもしているのだが、それまでのメニューにヒップリフトも追加。これは5月の休養期間にMizunoで受けたフォーム測定のアドバイスを元に、脚のスイング改善を目的としたものである。

今回のトレーニング期間では、走行距離以外にも過去と比べていくつか変えている点がある。大きな変更点の一つは走る時間を朝に変えたこと。その最大の理由は夏場の日中の暑さを避けるためだったが、これは実際に非常に効果的だった。6時または6時半に起きて、目覚ましのために30分ほど自宅で仕事してから走っていたのだが、昼間に30℃を超える見込みの日でもこの時間ならせいぜい20℃超程度、ほとんどの日は10℃台半ばくらいだったので暑さを感じることはほとんどなかった。さらに自宅近くのコースは午後になるとかなり風が強くなるのだが、日の出前後くらいの時間帯ではほぼ無風で、安定的なコンディションで走れたのもよかった。筆者は寝起きが悪く、朝は体の動きが悪いのではというのが心配だったのだが、実際にやってみたら思っていた以上に体が動いて問題はなかった。

また、フラットなChicagoのコースを前提として、トレーニングのコースも平坦またはあまり坂のない場所を中心にした。とくに、週末のロング走で多用していたSawyer Camp trailでは、北端1マイルの急坂を完全にスキップして南側5マイル部分だけを走るようにした。Chicago向けで坂のトレーニングが不要であるのと同時に、とくに下り坂での故障のリスクを下げるためである。

さらに、トレーニング中のペースを把握するためのGarmin時計のオートラップ設定を1km毎から1マイル毎に変更した。国際人を自認する者として世界の片隅でしか通用しない謎単位を使うのは耐え難いのに加え、渡米前から長年走っている筆者としてはそもそもkm単位のペースの方が感覚的にしっくりくるので、普段は1kmごとのラップでペースを把握しているのだが、今回だけは甘んじてマイルベースのラップに感覚を慣らすことにした。Chicagoに限らずアメリカのレースでは距離マーカーはマイル単位が基本である上に、ビル群のあるChicagoのコースではGPSはあまり役に立たないという情報があり、マイルマーカーを頼りにペースを把握する必要に迫られそうだったためである。目標ペースに対する1マイルあたりのタイムは予め計算して覚えておけば済むことだが(ちなみに3時間10分ペースで7分15秒弱)、現実にはそこから多少速かったり遅かったりするので、たとえば10秒速いペースがどういう意味なのかを体感的に会得しておく必要がある。これも計算は可能だが、少しでもエネルギー消費をおさえたいフルマラソンのようなスポーツでは脳を使わずに済ませられるところは済ませたい。そこで日頃からマイル単位のペース感に慣れるようにして、たとえば「7分5秒」のラップを見て「少し速すぎるのでおさえた方がいいけどまだオーバーペースというほどではない」といった感覚を養うようにした。

トレーニグスケジュールとして、もともとは6月最終週から「スピード養成期」のトレーニングをする計画だったのだが、アキレス腱痛のためにその予定が大幅に狂ってしまった。なんとかまともに走れるようになってきたのが7月の第3週(本来ならこのphaseの4週目)。さらにその翌週は出張のため強度の高いトレーニングはできず、結局「スピード養成」メニューはほとんどこなせないまま「走り込み期」に移行。

この頃からようやくアキレス腱をあまり気にせずに走れるようになってきて、走行距離的にはやっと想定メニュー通りの内容をこなせるようになった。といっても走力的にはまだまだで、16kmスピード走では4’10″/kmを切るくらいまでは上げたいと思っていたのに対して4’15″/km弱程度で走っていた。この頃はまだ3時間一桁を達成できるという感触はなく、目標も3時間15分に下方修正してCorralを移動すべきか(当初指定ののcorralには3:15のペースグループがなかったため)迷ったりしていた。

「走り込み期」第4週にははじめてVaporflyを使用。このときの16kmスピード走でいきなり平均ペース4’05″/kmを達成し、その効果に驚いた(しかし後から思うとちょうど走力が向上しはじめた時期でもあったような気はする)。この調子でトレーニグを続けていけば…と思いきや、その週末でまたしても故障発生。今度は去年12月と今年4月に続いての右足ヒラメ筋近辺の軽い肉離れ的症状である。過去2回の経験では完治までに3-4週間かかっているのでかなり絶望的な状況に思えたが、幸いそこまで酷くはなかったようで、中2日で超スロージョグができる程度には回復、その週はスロージョグのみで流して、週末には20kmを3時間一桁ペースで走れるところまで回復した。最悪の事態は免れたものの、この間に予定していた30km走を二回ともキャンセルする形になり、長い距離の走り込みに不安を残す形になった。

一方、躓きながらも継続してきたトレーニングの効果がようやく現れたのか、軽い故障で一息入れたのがかえってよかったのか、はたまたダイエット効果なのか、理由はよくわからないながら、「レースシミュレーション期」に突入したこの頃から走力にブレークスルー的な伸びが感じられるようになった。スピード走では平均4’10″/kmを楽に切れるようになり、2回実施した32km走も3時間一桁台のペースでこなして、走力としては3時間一桁を十分狙えるという自信がついた。32km走の2回目では再びVaporflyを投入して、長い距離でも問題が出ないことも確認した。不安があるとすると長い距離の走り込みが若干不足していることによる30km以降の減速だが、これはもうやってみるしかないと腹をくくることにした。

「シミュレーション期」の後は2週間の「調整期」でいつものようにテーパリング。1週目はまだ少し疲れが残っていたのか体が少し重い感じだったが、2週目でよい感じに軽くなって、ほぼ準備完了という状態になった。また、Chicagoとの時差(-2時間)と比較的早いスタート(朝7時半)であることを考慮し、2週間前からは6時、1週間前からは5時半に起床して、体内リズムが少しでも現地に近い条件になるように調整した。

トレーニング期間は実質7-9月の3ヶ月、月間走行距離はそれぞれ189km、191km、226kmであった。平均で202km、昨年のNY前が月平均177kmだったので、故障はありつつも去年よりは距離を踏んでいたことになる。

カーボローディング

カーボローディングは効果があるのかはわからないのだが、過去に実施して少なくとも悪影響はなかったと思われるので今回も同様に実施。Vancouver前の方法を概ね踏襲して、以下のようなメニューとなった。

  • 3日前朝: ご飯約1合(300g)、グレープフルーツジュース1杯
  • 3日前昼: ご飯約1合(300g)
  • 3日前夕: ドーナツ2、バナナ1
  • 3日前夜: パスタ150g、カットパイン5,6個
  • 2日前朝: ご飯約1合(300g)、グレープフルーツジュース1杯
  • 2日前夕: ホットドッグ、ドーナツ2、バナナ1
  • 2日前夜: ラーメン大盛り(麺と具のみ摂取)
  • 1日前朝: マフィン2、オレンジジュース1杯
  • 1日前昼: 東南アジア(シンガポール?)麺、バナナ1
  • 1日前夜: パスタ一皿
  • 当日朝: マフィン1・クロワッサン1/3くらい、オレンジジュース・バナナ1

2日前は移動日でやや変則的になっている。行きのSFOで牛丼を買って昼ごはんという予定だったのだが、若干遅刻気味かつカウンターやセキュリティが異常なほど混んでいて買いそびれ、機内で食べるという計画が狂ってしまった。

レースプラン

トレーニングの出来から、目標タイムは3時間10分未満に確定。走力だけからすれば余裕を持って切れそうという感触もあったが、3時間15分切りには2度失敗していることもあり、今回は3時間10分を確実に切ることを第一目標とした。スタートするcorralにはちょうど3時間10分のペースグループがあるのでそこに入って、少なくとも20マイル(32km)まではグループでじっとして体力と気力を温存、さらにVancouverで35km以降に脚が止まったことと今回も走り込みの量に若干不安が残るということから、基本的に22マイル(35km)までは脚をためて、そこでまだ余裕があれば上げていく、というのが基本的なプランであった。ペーサーによっては前半に貯金を作る形で少し速いペースにする人もいるが、トレーニング中のロングランでは3時間10分よりも速いペースで十分走れていたので、多少速くなっても余裕を持ってついて行けるという自信はあった。

Chicagoのようなメジャーレースでは人混みへの対策も必要になる。去年のNYでの教訓を活かして、ペースグループではなるべくペーサーの近くの位置をキープすること(離れると他の群衆に割り込まれてグループからの距離が開きがちになる)、給水はエイドステーションの中盤以降の比較的空いているところで取ること、をプランの一部として頭に入れておいた。

また、ペースグループのペースに任せきりになって気がついたら負債ができていたNYでの反省から、今回はグループの中でぼーっとしてなるべく頭を使わないようにしつつも、自分でもラップやスプリットはちゃんと管理して、大きなズレが出ないようにしようと考えていた。

その観点からも、Chicagoでもう一つ考えておかないといけないのはビル群(によるGPSロス)対策。高層ビルに囲まれるdowntown中心部ではGPSはほぼ機能しない上に、スタート直後に数百メートルくらいのトンネルを通るので累計距離もいきなり狂うことになる。マイルマーカーを頼りに手動でラップを取っていくというのも一案だが、筆者はあえてオートラップ(1マイルごと)はonにする方を選んだ。1マイルごととはいえ余計な作業はなるべく入れたくなかったこと、マイルマーカーを見逃すこともありうること(実際何箇所かは見逃した)、ビル街を除けば全体としてはGPSが機能する区間の方が多そうで、累計距離はあてにできなくても直近のラップを知るだけならオートでも概ね十分だろうと見越したためである。比較的見通しのいい場所で走っていてもある程度はずれてくるので、数マイルおきに手動で切り直して実際のラップに近い値を把握しながら走るつもりでいた。実際にこれでかなりうまくいったと思うが、手動での切り直しも結構な回数になった(本来26.2マイルで計27ラップのところが実際には36ラップ記録されている)ので、マーカーごとに手動でラップを取る方法との優劣は微妙なところではある。

普通のコースなら上りや下りのポイントを確認しておくのだが、ほぼフラットなChicagoではそれは不要。一方でChicagoは気象条件が年によってかなり違うことでも有名(雪の年もあれば暑さで途中中止になった年もあり)であるため、1週間前くらいから天気予報をチェックして、気候がよさそうなことは確認しておいた。条件で不安点があるとすれば、(windy cityと呼ばれているだけあって)風の影響くらいだが、天気予報の情報では強風というほどではなさそうで(たしか25mi/h = 1.1m/sくらい)この点でも大きな問題はなさそうだった。一応風向き(予報では西南西)だけは頭に入れておいた。

エネルギージェルの補給ポイントについても、坂のないChicagoではあまり頭を悩ませる必要はない。概ね7mi過ぎ(11kmくらい)、14mi近辺(22kmくらい)、20miあたり(32kmくらい)でそれぞれ補給、それに加えて塩分タブレットを18mi前くらいで摂取するつもりでいた。

レース2日前〜前日

Chicagoにはレース2日前の金曜日に移動。土曜発でもexpoには十分間に合う時間に着けそうではあったが、フライトの大幅delayとか最悪キャンセルなどといったトラブルもそれなりの確率で起こるだろうし、結果として間に合ったとしてもそこで余計なストレスを抱え込むのも避けたい、ということで金で時間を買うことにした。この日はホテルにチェックインしてすぐ晩ごはんを食べてさっさと就寝。

土曜日は朝5:30に起床。8:00頃に下見としてスタート地点のGrant Parkまで(当日も使う予定の)地下鉄で移動し、3kmほどの軽い調整run。その際、フラットなChicagoのコースの中で唯一嫌らしいと言われる残り800m地点あたりの坂も実際に走って確認しておいた(リンクしたStravaの地図における南端を東に向かう部分)。距離300mに対して7mの上りで、斜度でいえば2.3%なので坂というほどのものでもないが、40km以上走ってきた後なので予期していなければ心理的には負担だろうし、ここで踏ん張って痙攣などを起こすという危険もあり、イメージを持っておくのにこしたことはない。

下見の後はバスでexpoに行き、packet pickup(余談ながら、Chicagoの公共交通機関CTAはバスも電車もapple pay(等)による”pay as you go”対応で、とても旅行者friendlyであった)。買い物には興味がないのでpickup後はペースグループブースで3時間10分のグループに登録し、ペーサーと話してイーブンペース予定であることだけ確認してさっさと退散。ペースグループのブースでは下の写真のようなペース配分tattooをget。よくあるバンド状のものより見やすいかと思って使ってみたが、結局走りながら読み取るのに難儀してあまり役に立たなかった。

午後はホテルでゆっくり翌日の準備をして、17時過ぎに近場のイタリアンでパスタの晩ごはん。ちなみにみんな考えることは同じなようで、ホテルから徒歩圏内のめぼしいイタリアンのよさげな時間は2週間前でもほとんど予約済みであった。まあ次はないと思うが、もしまた走ることがあるならもっと早い時期の予約が必要なようである。

晩ごはんの後はホテルに戻って少しまったりし、21:30に就寝。

レース当日: スタートまで

起床はスタート3時間前の4:30am。さすがに早くベッドに入りすぎたのか睡眠の質はいまいちだった。マフィン・クロワッサン・オレンジジュース・バナナの朝食を取って、ホテルの部屋でワセリンを胸と股に塗り、5時半頃にホテルを出て地下鉄駅Red LineのGrand駅へ。

7:30のスタートに対して、ある程度の余裕を持たせつつ寒い中であまり長時間待たないで済むようにとのバランスを考えて1時間半前の会場入りを考えていたのだが、時刻表には載っている5:48の地下鉄が来なくてちょっと焦る。結局6:00過ぎまで待って、やっと来た電車もかなり混んでいたのだがなんとかもぐり込み、Jacksonで降りて早足で入口ゲートへ。ゲートの先のセキュリティでかなり時間がかかるかもと脅されていたが、ほぼスカスカで、スタート1時間以上前にはbag checkエリアに到達して一安心。ここで最初のトイレ(大きい方)を済まし、日焼け止めを塗ってからbag checkしてCorralへ移動。

天気予報からかなりの寒さも予想して色々準備していたのだが、実際には最低気温で7℃と、寒いながらも極端に低い温度にならずに助かった。寒さ対策としては、一応レース用のTシャツ・短パンの上にdonate用の使い切りパーカーを着て、その裏にカイロを貼り付け、さらにその上に100円ショップの銀紙ポンチョ、両手には軍手という格好で十分以上であった。気温も低く、曇りの予報だったので必要ないかもとも思ったが一応帽子も着用した。

Corralに向かう途中で割と列の少ないトイレ群を見つけて2回目のトイレ(小のみ)。Corralエリアに入ったところでまたトイレ群があったので、時間までぎりぎりだったがさらにもう一度行っておいた。このダメ押しトイレのおかげで、低い気温でもレース中にはまったく尿意を感じずに済んだ。Corral内入りは7:20分少し前(一応締切が10分前なので際どいが、トイレエリアからはすぐの距離)。7:25分ごろにパーカーとポンチョをコース脇に置いて、7:30のスタート後Elite、Corral Aのグループに続いてスタート。スタートラインの通過が7時34分41秒。

レース当日: スタートからゴールまで

スタート後すぐ、プラン通りに3時間10分のペーサーの直後について、その後はなるべくリラックスを心がけた。1マイルのマーカーは見逃したが、2マイル時点の通過が(やや記憶が曖昧ながら)14分ちょうどくらい、7’15″/miのペースからするとやや速いが想定の範囲内であり、体も楽だったのでそのまま追走。

3マイルを過ぎたところで、目の前にいたペーサーが「後で追いかけるから」と言って離脱してしまう(トイレか何かだと思われる)。他に2人ペーサーがいたはずなのだが周囲に見当たらなく、ペースグループの他のランナーも見分けられず、なんとこんな早い段階でペースグループからはぐれてしまった。グループの中では前の方にいたはずと思って、少しペースを緩めて待ってみたのだが合流できず、そのまま10km地点くらいまで進んでしまった。このあたりでスプリットを確認すると、3時間10分ペースからは1分以上は速いことがわかり(5kmが22分半という切りのいいペースなのでスプリットタイムでの状況把握がやりやすかったのは幸いだった)、どうやらペースグループからは完全に飛び出してしまったらしいということが判明。(グループのペースはわからないもののほぼイーブンだとして)ここまで差がついてしまうと吸収され直すまでペースを落とすのもかえってリズムを狂わせそうなので、この段階で一人旅を決断。周到に準備したつもりでも思いもかけないことが起こるのが本番である…。ちなみにトラブルという意味では4マイルくらいのところで心拍数モニタのベルトが外れるというアクシデントも発生。走りながら付け直すのは結構大変なのだが、なんとかあまりロスせずに再装着に成功した。

心配の一つだった人混みは、NYに比べれば遥かにましだった。NYのときのblogでは「10kmを過ぎてもすぐに前が壁になるような状態」と書いているが、Chicagoでは5kmくらいですでにそれなりに周辺の空間ができるようになり、10kmくらいの地点では人混みはほとんど気にならない状態だった。給水もそれほどの混雑ではなく、給水位置などでそんなに工夫しなくても取り損ねるようなことはなかった。NYのときと違って一人で走る形になったため人混みには対処しやすかったというのもあると思うが、corral間の出発間隔を多少開けるようにするなどの運営側の工夫も効いているのかもしれない。

なお、公式には5kmおきということになっているkmマーカーだが、実際には1km刻みのものを多数見かけた(ただし全kmポイントにあったかは不明)。公表していないだけで実際には1kmおきにもマーカーを置いているのか、非公式のボランティアによるものなどなのか、いまひとつ事情はわからないが、どうしてもkmベースで走りたいという人にとっては役立つかもしれない。ただ、公式にはあくまで5kmおきということになっているから、1kmごとのマーカーの存在をあてにし過ぎるのにもリスクはあるだろう。

目標タイムよりかなり速いペースで来ていても体には余裕があった(心拍数は随時確認していて、120台後半程度で推移していたので客観的にも余裕があることはわかっていた)のだが、Vancouverのときのこともあり、あくまで後半に力を残すべくスピードが上がりすぎないように、と言い聞かせつつ、概ねまともに機能するようになってきたGPS時計でラップも確認しながら走っていた。7マイルを少し過ぎたところで予定通りに最初のジェル摂取。

8マイルくらいでコースの北端に達し、折り返し気味に南下するコースになる。この区間は想定通りに向かい風になっていたが、押し戻されるほどの強風ではなく、とくに意識しなくてもペースをそれほど落とさずに進めた。一方、曇空の下風が吹き付ける状況で、手の指先が冷たくなってしまったのが少し辛かった。3-4マイルくらいのところで体が温まってきたと感じて軍手を捨ててしまったのだが、もう少し様子を見ておけばよかったと後悔。ただ、寒さで気になって走りに影響が出るほどではなかったのは幸いだった。Vancouverでは(いろんな意味でまったく条件が違うのだが)15kmくらいですでに疲れを感じはじめていたのが、この日はそのくらいの距離でもまだ十分に力を残しているという感覚があって心の支えになった。

その後も淡々とペースを維持し、中間点の通過が1時間33分弱。3時間10分ペースからは2分ほど速いことになる。前半にこれだけの貯金を作る形になることは想定していなかったのでオーバーペースによる後半のペースダウンの可能性が心配ではあったが、心拍数はまだ120台、脚にも疲労感はなかったので、ペースを維持するか自然に少しペースダウンするかという程度を目安に後半に突入。14マイルを過ぎたあたりで2つ目のジェル摂取。

中間点から25kmくらいまでは西向きで、ここも少し向かい風になる。ここでもそれほどペースは落ちていなかったが、可能なときは体の大きな人のうしろにつくようにしたりして、なるべく体力を温存するように心がけた。このあたりで最終32km走でも少し怪しかった左脚付け根に少し違和感が出てきて不安になったが、痛みになって走りに影響が出るようにはならなかったのでそのままのペースを継続。

25km過ぎで進路が東になると、はっきりわかるくらいの追い風で少し楽になった。呼吸も脚もまだ大丈夫、という感じだったが、勝負はあくまで35kmから、ということでペースが上がり過ぎないように心がけた。17マイル地点ではじめて(かつ唯一)ペース配分tattooを利用、3時間10分ペースから2分半ほどの貯金があることを確認。1マイルごとのオートラップの数字でも目標ペースを少し上回る程度でのラップを続けていることは大体わかっていたが、貯金を食いつぶすのではなく逆にじわじわと増えていっていることがわかって勇気付けられた。18マイルあたりで塩分タブレット摂取。

30kmを超え、さらに20マイルを過ぎてもまだ脚には力があり、貯金も十分ということで、このあたりから3時間一桁達成への確信が湧いてきた。20マイル近辺で最後のジェル摂取。ここからペースアップということも考えられないではなかったが、終盤での大幅な失速や痙攣のようなトラブルなく走り切ることが大事と言い聞かせて22マイルまでは我慢。

35kmを2分半の貯金を持って通過し、余力の度合いから3時間一桁はもうほぼ間違いないところまできたと判断、ここから少し意識してペースアップをはじめた。それでも無用なトラブルを引き起こさないようにある程度の余裕は残していたが、ペースアップによって他のランナーをどんどん追い抜くようになり、最後に進路が北向きになってからはかなり充実した精神状態で走っていた。

40kmは3分超の貯金で通過、目標達成はもう90%間違い無しと思いつつさらにじわじわスピードを上げて残り1マイルの標識を超え、Rooseveltへ右折した後の予習済みの上りも力強くクリアして、最後は思わずバンザイでゴール。時計を止めてタイムを確認すると3時間6分台、うまくいっても7-8分というところだと思っていたので、文句の付けようのない結果である。

総括と今後

Chicagoは噂通りの高速コースだった。女子で世界記録が出たことからしても、気象条件もベストに近かったのではないかと思われ、運にも恵まれたとはいえ目標を達成できて満足である。レース内容も、ほとんどを一人でペースを作って走っていたことを考えればほぼ完璧だった。

結果論としていえば、終盤まで脚が残っていたことや全体的な余力から考えて、ぎりぎりを狙えばあと1分くらいは縮められたのではないかと思う(たとえば背伸びして3時間5分のグループに入っても最後までいけた気がする)が、サブスリーならともかく、同じ3時間一桁であれば個人的には価値に大差はないし、今回はあくまで確実に目標タイムを達成することが第一だったので、これ以上は高望みであろう。

レース初投入だったVaporflyも効果があったように思う。同じ条件での比較のしようがないので想像でしかないが、トレーニングでおもに履いているHoka Rinconだったらあと1,2分は遅かったのではないだろうか。また、これも証明のしようがないが、終わった後の疲労感も軽めで済んでいるような気がする。翌日はさすがにかなり筋肉痛がきつかったが、過去のマラソン後に比べればましだったように思うし、レース後4日目の執筆時点で故障のような症状も出ていない。

トレーニングについては、途中の故障などにより若干走り込み量が足りないのではないかと危惧していたが、結果的には最後まで脚が保ったので十分だったようだ。比較的安全策で余裕を持ったペースを維持したのが大きかったとも思うが、最長32kmくらいの走り込みでも足りないというほどではないと言えそうである。

2年前のハーフマラソンでNYCMをqualifyしたことをきっかけにはじまったフルマラソンへの挑戦もこれで一区切りついたような気がする。タイムという点ではまだもう少し伸びる余地はあると思うが、大きな故障をせずに達成できる上限にほぼ近いところまでは到達したように思うので、今後は、lifetimeの自己ベスト更新のような方向とは違う、年齢相応の新しい目標を見つけて挑戦していきたい。

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