Feb 15

2013年7月に転職して以来、HSAとかESPPとか、いままで経験していなかったファイナンス関連の制度を(不本意ながら)勉強・経験してきたのだが、このシリーズに新しいイベントが追加されてしまった。以下はそれに関するメモ。なお、書いているうちに長くなってしまったので2エントリに分けることにした。これはその前編である。

背景: 401k-to-IRA Rolloverとbackdoor Rothへの課税

2010年以来、筆者は俗にBackdoor Rothと呼ばれる方法でRoth IRAへの拠出を実現してきた。2013年もこの方法で拠出していて、しかもそれは年のはじめの方の作業だったため、それ以降ほとんど忘れていた。

一方、その年の7月に転職するにあたって、退職する職場での401(k)内資産をどうするかという問題があった。その401(k)プランは非常に粗悪だったので、ここでは迷わずtraditional IRAへのrolloverを選択した。(後知恵的には、転職先のプランには一応持っててもいいと思えるファンドもあったので、すぐrolloverせずに様子を見るべきだったと思うが、いろいろはじめての経験でもあり当時はそこまで頭が回らなかった)。

このオプションを選択した場合の大きな欠点の一つは、それ以後backdoor Rothの技が使いにくくなってしまうことである。Traditiona IRAからRoth IRAへのconversionは、税金処理上は”distribution”(引き出し)ということになり、課税対象となる(ただし普通の引き出しと違って早期引き出しのペナルティはない)。しかし、もともとのtraditional IRAへの拠出がnon deductibleのものであった場合(かつ拠出後すぐにconvertした場合)は実質的に課税対象額がゼロとなるため、結局Roth IRAに直接拠出しているのと同じ効果が得られるというのがbackdoor Rothのミソなのだが、401(k)のような”pre-tax”(つまりdeductible拠出)からのrolloverをすると、この効果が大きく削がれてしまう。

これは、deductibleとnon deductibleの拠出分が混在するIRAからの引き出しへの課税ルールの特徴による。具体的にはIRS Form 8606のinstructionにしたがって計算するとわかるが、convertした額に対して以下の割合分がordinary incomeとして課税される。

  IRA残高 ÷ (convert額 + IRA残高)

ここで、「IRA残高」は年末時点での全traditional IRA口座の残高の合計。また、拠出額=convert額と仮定している。

ある程度長い期間をかけて積み立てた401(k)資産をrolloverしたような場合、「IRA残高」はかなり大きくなっている可能性がある。仮にこれが10万ドルだとして、2013年のtraditional IRAへの拠出上限である5500ドルを拠出してconvertしたとすると、convert分の94.8%, 5213ドルに課税されてしまう。もともとの5500ドルがafter taxであることを考えると、ほとんど二重課税といってもいい仕打ちである(正確には、いずれ発生するpre tax分への課税が前倒しされているだけで二重課税ではないのだが、非課税または課税繰り延べ効果というIRAや401(k)の価値を大きく損なっているのは確かである)。

さて、上で「それ以後backdoor Rothの技が使いにくくなってしまう」と書いたが、この選択をした以上、転職後のbackdoor Rothは諦めるしかないかと思っていた(が元の401(k)プランがひどかったので仕方ないかと思っていた)が、2013年にすでに拠出してconvertしてしまっていた分もこの対象になることまで頭が回っていなかった。2013年分の税金の処理をしている過程でこのことに遅まきながら気が付き、その後しばらくどうするか考えていたのだが、結局、面倒だがファイナンスリテラシー的にはもっとも正しいと思われる方法を採ることにした。それがここでの本題である”IRA Recharacterization & IRA-to-401k Rollover”である。

余談: この「二重課税もどき」を回避するために、traditional IRA口座を複数持って、rollover分とbackdoor用とに分離するのはどうか、というFAQがあるらしいが、それは不可能というのが答えである。このことはform 8606の構造を見れば明らかで、課税対象分を計算する際の残高が全口座の合算であるためである。

Roth IRAのRecharacterization

Recharacterizationは、あるIRA(たとえばRoth)への拠出を、もともと別なIRA(たとえばtraditional)への拠出であったかのように扱いを変えること。IRS Pub 590に説明がある。ここでの主題であるtraditionalからRoth IRAへのconversionという文脈では、traditionalからの引き出し額をRothに拠出したと考えた上で、recharacterizationによってその拠出(conversion)を取り消して資産をtraditional IRAに戻すということになる。

Recharacterizationは、当該拠出(conversion)についての税金申告の締め切りまで可能。たとえば2013年に実施したconversionについては2014年10月15日までrecharacterization可能。

Recharacterizationのためには、convertした資金を実際に元のtraditional IRAに戻す必要がある。その際には、convertした金額そのものだけでなく、convertからrecharacterizationまでの期間の運用益(または損)のうちconvert額に対応する部分も含める必要がある。この運用益の計算方法は上記Pub 590のリンク部分にあるWorksheet 1-3に記載されている。が、これもPub 590に記載されているように、この計算は実際には証券会社側がやってくれることが多い模様で、筆者の場合もそうだった。したがって、その詳細についてrecharacterizationをする個人が悩む必要はない(証券会社側の計算が信頼できると思える程度においては)。

Roth IRAへのconversionをrecharacterizationで取り消すと、convertした年の翌年はじめ、もしくはrecharacterization後30日、のうちの遅い方までの間は再度convertすることはできない。

Recharacterizationの税金処理

Recharacterizationした結果は、元のconvertの年についてのtax returnでIRSに報告する。この詳細はForm 8606 instructionに記載されている。2013年に実施したbackdoor Rothのconversion取り消しというケースでは以下のようになる:

  • 2013年中にrecharacterizationした場合、Form 1040 line 15aに元々のconversion額とrecharacterizationでtraditional IRAに戻した額の合計を記載
  • 2014年にrecharacterizationした場合、Form 1040 line 15aに元々の拠出額だけを記載

さらに、どちらの場合にも、元々の拠出とrecharacterizationの日付と金額をattachmentとして報告する。

これに加えて、Form 8606にも特別な配慮が必要(backdoor Rothを使う場合は元々のtraditional IRAへの拠出は普通non deductibleだろうから、recharacterizationの有無に関わらずForm 8606は提出する必要がある)。Line 6には2013年末時点でのtraditional IRAの残高を記載する必要があるが、instructionによると、ここには2013年末以降に実施したrecharacterizationの額も含めることとなっている。この部分は、年末の残高にrecharacterization額を足せばよいのか、何か別の方法で計算するのか、instructionからだけではいまいちよくわからないのだが、convertした全額を取り消した場合については、いずれにしても追加で納める税金は発生しないはずなので、あまり気にせずに何か指摘されたらそのとき対応する、くらいでもよさそう。一方、convert額の一部だけをrecharacterizeした場合、line 6の額が上で示した課税対象額の計算式における「IRA残高」として使われて、納税額に影響を与えることになるので、正確さが求められる。まあrecharacterizeする以上は全額する方がトラブルがなくて済むということか。

Tax return後にrecharacterizationした場合(これはreturnのextension期限、普通10月15日までは可能)には、修正申告の1040Xと共に、修正したForm 8606を提出する(Form 8606 instruction参照)。この場合は、convert額に課税されていた分がなくなるはずなので1040Xでは還付が生じる。Form 8606は上記の通りline 6の値が変わり、(全額をrecharacterizeしたとして)line 8(Rothへのconvert額)がゼロになり、line 15の課税対象額もゼロになる。また、元々の(non deductibleの)拠出額は翌年以降のベースとしてline 14に記載される。

VanguardでのRecharacterization

Vanguardの場合、recharacterizationのためには専用form(PDF)に記入して郵送する必要がある(convertはオンラインのみでできることを考えると大変不便である…)。

過去のstatement等からconvertの日付と金額を調べてそれをpage 2に記入し、page 3にrecharacterizationのために移管するfundとその分量を指定する。上述の通り、移管する額にはconvert時からの運用益部分を含めなくてはいけないのだが、この計算はVanguard側でやってくれるので、たとえばfundが一つしかないような場合ならそれを指定して100%としておけばよい。”Additional holding”の項は、筆者の場合はMMFを指定しておいたが、実際には移管対象のfundがrecharacterization分よりずっと大きな残高を持っていたのであまり関係なかったと思う。

Vanguardのformの埋め方については、別な人による図解入り解説も参考になる。

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