Oct 19

このエントリと、それに続くエントリは、O-1ビザというちょっとマイナーなアメリカビザの取得談です。筆者の知る限り、このビザに関する具体的な情報はかなり少ないようなので、何かの役に立つかもしれないと思ってまとめました。


日本人がアメリカで(生活しつつ)働くためには当然ビザが必要である。エンジニアの場合、日本の企業から現地(=アメリカ)法人への海外赴任という形で働くならL-1ビザ、アメリカの企業に現地採用された場合はH-1Bビザというのが一般的だと思われる。筆者の場合は「現地採用」にあたると思うが、H-1BではなくO-1というビザで滞在している。

アメリカ移民局のページにある説明によれば、O-1は”Aliens of extraordinary ability in the sciences, arts, education, business, or athletics”(科学、芸術、教育、ビジネスまたはスポーツにおける卓越した能力を持つ外国人)に対して与えられることになっている。このページの説明では、”extraordinary”であることの要件にはたとえば「ノーベル賞などの、世界的に認知された賞(internationally-recognized award, such as a Nobel Prize)」を受賞をしていること、などとあり、とても一介のプログラマが該当しそうにはないように思えるのだが、実はノーベル賞はおろか、いわゆる研究者でもなく、たまたまPh.Dを持っているエンジニア、という程度でも結構発給されてしまうものらしい。

O-1ビザがH-1Bに比べてよい点は、中村孝一郎さんの解説にある通り。ただし、この解説ではさらりと触れられているだけだが、最近のビザ事情の観点からもっとも重要なのは、「発給数の上限(cap limitation)がない」という点だろう。ここ数年の(とくにIT業界の)好景気で企業の雇用意欲が強かったことと、2003年以降H-1Bの発給上限数が65000まで減った(正確には一時的に増やされていたのが元の上限に戻った)せいで、H-1Bの発給はかなり厳しい倍率の抽選となっていて、中には何年も落選中という人もいるらしい(4月のロイターの記事によれば、今年はH-1Bの申請受付初日だけで20万の応募があったそうだ)。ここにきて景気が急に悪くなって企業も採用を減らしていることはビザ申請という観点では有利に働くかもしれないし、Bush後の新しい政権の移民政策次第でもまた状況が(どちらの方向かはともかく)変わるだろうが、少なくともO-1ビザの場合には申請の条件さえ満たしていれば運に左右されることはない。

なお、O-1ビザとは無関係の蛇足ながら、筆者の現在の雇い主であるInternet Systems Consortiumという会社は非営利企業のため(さらにいうと501(c)(3)というタイプの非営利企業であるため?)、H-1Bのcap limitationが免除されているそうだ。移民局の通知にある”Nonprofit research organizations or governmental research organizations”に該当するのだろうか。筆者の大ボスは「これまでH-1Bの取得に失敗したことはない」と豪語していた。

後から振り返ってみると割合さっくり取れてしまったO-1ビザだが、やはりマイナーなビザであるせいか、手続きをしている最中は情報がほとんどなくてかなり手探り感が強かった。「O-1 ビザ」のようなキーワードで検索してみても、引っ掛かるのは芸術方面での体験談もしくはその他のビザ情報と一緒にリストアップされたごく一般的な情報ばかりで、技術者の立場での申請に役立つような具体的な例がほとんど見つからない。その中でほぼ唯一といっていい、かつ非常に参考になる関連情報が上述の中村孝一郎さんの例。筆者の場合の手続きもこの例のプロセスとかなり近く、敢えてそれに付け足すような要素はあまりないのだが、インターネット上の他の多くの情報と同様、たとえ同一に近い内容でも別々のソースから提供されていることによって全体としての信頼度が上がることは期待できるだろう。というわけで、以下(長くなったので別エントリで)では筆者の場合の例をまとめてみる。

なお、H-1B同様O-1も雇い主との雇用関係に基づくビザで、実際の申請にあたっての具体的な作業は雇用する側が用意する移民弁護士がやってくれることがほとんどだろう。この弁護士が十分に優秀であれば、言われた通りの書類を用意してまかせておけばとくにトラブルもなく発給されるのではないかと思われる。それでも、全体のプロセスを本人が具体的に把握しておくことは、申請書類に対して移民局から余計な突っ込みを受けるリスクを下げたり、ビザが発給されるまでの不安感を軽減したりするための役には立つと思う。

(以下、「プロセス編」に続く)

コメント 5 件

  1. Koichiro Nakamura Says:

    Jinmeiさん、初めまして。技術者・研究者のO1ビザ取得情報、日本語では本当に少ないですね。O1ビザで検索してくる人が結構多いので、Jinmeiさんのエントリーも参考にしてもらいたく、私のエントリーからリンクしました。
    http://d.hatena.ne.jp/koichiro516/20070607

  2. jinmei Says:

    中村さん、はじめまして。コメントとリンク、ありがとうございます。

    Pioneerの方からリンクを張っていただき、光栄です(見てみたらすごく目立つところにあってかなり恐縮ですが:-)

  3. shigeya Says:

    いやー、blogしらなかった:p

    O-1とったんですね。僕の知り合いで二人目。。知ってたら、情報共有するのに繋げられたかもしれない(役に立ったかどうかは不明)。reference letterを手に入れるのに一番時間かかってたかな。

  4. jinmei Says:

    shigeyaさん

    > いやー、blogしらなかった:p

    ひっそりやってますんで:-)

    > O-1とったんですね。僕の知り合いで二人目。。知ってたら、情報共有するのに繋げられたかもしれない(役に立ったかどうかは不明)。reference letterを手に入れるのに一番時間かかってたかな。

    O-1ですっていう話は、shigeyaさんには(聞かれたので)してたと思いますけどね。役に立つかというと、実は微妙なところで、↑にも書いたように実際上は弁護士の言う通りにやってればまず間違いないって気もするんで、取れるとか取れないとかいう差になるかという意味での役には立たないでしょうね(僕のこのエントリも含めて)。ただ、人生の中でそう何度も経験するような話ではたぶんなくて、ほとんどの人にとっては初体験でしょうから、そこにつきまとう不安感を和らげる程度の役には立つかなと思います。

  5. shigeya Says:

    たしかに、聞いたような気もするなぁ(最近もう、記憶が薄れやすくて。。:D)

    一方、仰るように、まとまってるところがないから、書いてあるのはメリットあると思います。

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