Apr 30

数年前に新板が出たのを機にA Random Walk Down Wall Streetを再読中(といっても最初に読んだのは2002年で、かなりの部分を忘れているが)。その13章に、株式の理論長期リターンを示す以下の公式が挙げられていた:

  長期リターン = 初期配当利回り + 配当成長率

一瞬まあそんなものかと思って読み流しそうになったのだが、少しよく考えてみるとどうしてこういう計算になるのかは(筆者には)どうも自明でない。一度気になりはじめると夜も眠れないので、まじめに調べたり自分で計算してみたりして、それなりに納得のいきそうな説明にたどり着いた。以下はその記録としてのメモ。 More… »

Apr 01

最近ちょっとした調べ物をしたついでに、以前からモヤモヤしたままだった「アメリカ永住権を保持しつつ日本で数年間働くような場合の税金において日米租税条約はどう適用されるのか」という疑問について、自分なりにかなりはっきりした答えを得ることができた。詳細はかなり複雑なのだが、短く言ってしまうと、「租税条約によりアメリカの税制上非居住者扱いとすることは可能だが、手間や永住権維持上のリスクの点からおそらく取れない選択。二重課税は他の手段である程度緩和できそうなものの、アメリカ源泉所得についてはかなりの二重取られを覚悟する必要あり」が答えである。

以下はその答えに至るまでの調査結果の詳細である。いつものことながら、あくまで筆者の素人理解をまとめただけであるため、内容が正しい保証はまったくない。もしこれを読む人がいても、その内容を鵜呑みにして特定の行動を取ったり取るのをやめたりすることのないようにお願いしたい。筆者自身も、もしここで問題としている状況になったとしたら今回の理解をもとにしつつも専門家に相談するだろうし、他の人にもそれをおすすめする。

以下本題: More… »

Mar 22

筆者はふだんほとんど資産の売却をしないので、過去7回のアメリカ確定申告(tax return)において、キャピタルゲインやロスを報告する必要はほとんどなかった。せいぜいRSUやESPP関連の売却が数件ある程度で、これらについては1099-Bの内容を手入力する手間も大したことがなかったので、tax returnにおけるこれらの事務作業上の問題をあまり意識する必要はなかった(ただしRSUESPPとも、blogに書いたようにIRS規定に由来する罠はある)。しかし、2015年にはいろいろな事情が重なってかなりの件数の売却が発生したため、キャピタルゲイン・ロスについてのtax returnでの報告方法について、TaxActの操作方法も含めた実務上の細かい問題にいろいろ直面することになった。この記事はその学習結果のまとめである。

とくに重要な点をまとめておくと、

  • 取得日(date acquired)が異なる同一銘柄を同じ日にまとめて売却した場合は合算報告可能。これで事務処理をかなり軽減できる(可能性がある)
  • BasisがIRSに報告済みで、その他の修正もない場合はForm 8949での報告自体不要。これも事務処理軽減の助けになる(ただしTaxActでの操作方法はやや謎)
  • 多数の売却データをまとめてTaxActに入力するのにはCSVフォームのアップロードが便利。証券会社によってはこの形でデータをダウンロードできる場合もあるので要確認

それにしても、(今回はやや特殊要因という事情ではあるのだが)アメリカのtax returnも8回目にもなろうというのに、いまだに新しい発見が出てくることには呆れるしかないという感じである…
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Feb 02

一つ前の記事においては本題ではなかったが、”nonfunctional”通貨を”functional”通貨に変換する(たとえば日本円を米ドルに替える)行為はCFR 1.988-1(a)(1)(i)の”disposition of nonfunctional currency”に相当するため、”section 988 transaction”であり、この両替の時点でexchange gain/lossが実現されて該当年の課税対象となる。たとえば、CFR 1.988-1(a)(6)Example 2には、カナダドルを米ドルに替える操作におけるカナダドルの”disposition”がsection 988 transactionであるという例が示されている。
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Feb 02

一週間ほど前にこのタイトルの件で書いた「追記」のblog記事では、実は一つモヤモヤした部分が残っていた。金融機関が作成することになっているForm 1099-Bのinstructionの規定を、(金融機関が外国に存在するため)1099-Bが発行されない場合の一般の納税者に適用してもいいのかということである。状況からすれば適用できるはずと考えるのが自然だと思うが(アメリカ国内なら1099-Bの発行は義務だとはいえ、その有無によって譲渡益の計算およびその課税方法が異なるのは不自然だから)、やはり微妙な気持ち悪さは残る。そこで、もっときちんと調べて、より根本的と思われる資料を発見し、この理解でよさそうだということを確認した。ついでに、前回やはりやや曖昧だった「スポットレート」の定義についても、もう少し具体的な規定を発見した。以下はその調査内容の詳細である。
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Jan 31

前回のblog記事の続報: 久しぶりに新生銀行のwebページを見たらこの件の情報が更新されていた。

送入金とも、昨年中に口座を開設済みの場合はいまのところマイナンバーを届け出なくても可能なようだ。ただし新規の送金先の登録にはマイナンバーの届け出が必要らしい。筆者はこの登録手続きは済ませているので、それを使う限りはしばらくは大丈夫といえそう。ただし、送入金ともに「お届出いただいていないお客さまには、後日、個人番号(マイナンバー)のお届出をお願いする予定です」という断り書きがあるので、さらに何ヶ月か経過すると既存口座でもマイナンバー届け出なしでの送入金ができなくなるのかもしれない。できればそれまでに「そもそもマイナンバーをもらえない人」を締め出さないような対応策が導入されてほしいものである…

Jan 25

以前このタイトルで書いたblog記事について、転載先のFI Planning掲示板で質問投稿があった。「ちなみに」として付記したアメリカ側での申告における為替レート計算方法の根拠についてである。

この部分は当該記事の本題でなかったこともあり、書いたときも出典まで調べずにさらっと流してしまったのだが、改めて質問されてみると、自分自身根拠が曖昧だったということに気がついた。以前似たような状況についてCPAに確認したことがあり、それをそのまま信じただけでIRSの資料まで確認していなかったようだ。ということで改めてちゃんと調べてみた(いつものことだが、調べた内容やその解釈が間違っている可能性は常にあるので、鵜呑みにされないようにお願いしたい)。
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Jan 19

筆者は、保険の類全般について以下の基準を守るように心がけている:

  • ファイナンス上の致命傷にならない出費については、できれば保険には入らない。入らざるを得ない場合はできるだけ補償(したがって保険料)を低くする
  • ファイナンス上の致命傷になり得る出費については補償(したがって保険料)をケチらない

この基準がもっともわかりやすく適用されるのが自動車保険である。対人や対物(とくに前者)の賠償のための保険は、人生を損なうような出費につながり兼ねないので惜しまずに補償を厚くする一方、自分の車の車両保険についてはできる限り免責額(deductible)を高くして保険料を下げるようにしている。自分の車なら、ちょっとした傷なら修理するかどうかも自分で決められるし、スクラップになって買い換えるにしても当面は格安の低グレード中古車で我慢するなどの方法で出費をコントロール可能で、またその程度の額なら通常の貯金、あるいは最悪でも課税運用口座の資産を売却するなどして対応できるからである。同じような理由で、以前は深く考えず漫然と入っていたAAAも退会し、アップル製品の追加保証(AppleCare)もある時期から買わなくなった。

その中で、以前から気になっていながら毎回放置していたのが(国外)旅行中の医療保険である。外国で重大な事故や病気に遭って莫大な医療費が必要になるというのはまったくあり得ない話ではないし、これは致命的(金銭上でだが)な出費にもなり得る。もちろん、そういう事態に巻き込まれる可能性は一般にはかなり低く、実際幸いにしてこれまではそういう経験をせずに済んできたのだが、本来はケチらずに保険でカバーするべき類のリスクだという意識は常にあった。実際には、ケチって保険に入らなかったのではないのだが、少し検索してみてもあまりにたくさんの選択肢があって判断できず(とはいえよくわからずに決めるのは嫌という性格も災いし)、旅行前は何かとバタバタしていて結局そのまま放置、ということが続いていたのである。

そんな中、近々国外に旅行する予定ができ、今回はたまたま事前によく考える時間があった(なにしろこんなblogも書いているくらいである)ので、ついに旅行保険加入デビューに成功(?)した。今回はかなり時間をかけていろいろ調べたので、それを次回以降に活かすために記録としてまとめることにした。

先に現状での結論を書いておくとこんな感じである。

  • 必要な補償額は(もちろん国によるが)medicalで数十万ドルレベル、evacuationで十万ドル程度
  • アメリカ国内で入っている健康保険の条件をまず確認する
  • 別途保険を買う場合、補償額の条件に加えてadvance payment付きのものを再優先に、その上でできればprimary coverageのもの、という条件でフィルターし、その中で一番安いものにする
  • 持病のある人はpreexisting conditionの条件にも注意
  • キャンセル補償等、医療以外の補償は不要。なるべく外して保険料を削減する
  • Medicalのdeductibleもできる限り上げると保険料削減に役立つ

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Jan 09

新年になり、今年も確定申告(tax return)のことを考えないといけない季節が迫ってきた。昨年はいろいろ例外的なtax eventが発生していたので、確定しているところから早めに準備しておこうとしたところ、驚愕の事実が発覚: なんと、これまで無料だったTaxActのfederal分が実質的に有料化されている! More… »

Dec 16

以前にも書いたことがあるが、地雷だらけのアメリカの税金システムにおいては、給与の天引き額が不十分だと確定申告(tax return)時にペナルティを課されるという罠もある。筆者の場合、これまでは給与外の所得は課税口座にある株式や投資信託からの分配と銀行の利子程度で、給与に比べればこれらはかなり少ない上に、一部は国外で税金支払い済みのためにforeign tax creditが効くこともあって、あまり深く考えなくてもペナルティにかかるようなことはなかった。 More… »